1空き家管理費用は、自己管理でもゼロにはならない
空き家の管理費用というと、管理会社に払う委託費だけを想像しがちです。しかし自分で管理する場合でも、固定資産税、保険料、電気・ガス・水道の基本料金、見回りや草刈り、軽い修繕、交通費が毎年かかります。遠方の実家を見に行くなら、移動にかかる時間も負担になります。
総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は900万戸、空き家率は13.8%でした[1]。空き家の管理は、多くの家庭が直面するテーマです。
管理費用は、一度きりの出費ではなく「毎年かかる固定費」として考えることが大切です。この記事では、国土交通省の調査をもとに年間費用の実態を確認したうえで、費用が膨らみやすい条件、自己管理と委託の比べ方、管理をやめて家じまいへ切り替える基準を順に整理します。
2空き家の年間の維持管理費用(国の調査)
- 費用はかかっていない12.1 %
- 1万円未満10.6 %
- 1〜3万円未満14.1 %
- 3〜5万円未満11 %
- 5〜10万円未満15.6 %
- 10〜20万円未満16.7 %
- 20〜30万円未満8.5 %
- 30万円以上8.5 %
※ 空き家を所有する世帯に、建物と敷地の維持管理にかかる年間の費用を尋ねた結果(N=1,381千戸、「不明」2.9%は省略)。費用には、管理委託料、電話・ガス・水道などの契約費用、空き家までの交通費、税金などが含まれます。戸建てのほか共同住宅・長屋も含み、共同住宅などでは共益費・管理費・修繕積立金も含みます。
3年間費用の内訳と、費用が上振れしやすい3つの条件
国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査では、年間の維持管理費用は「10〜20万円未満」が16.7%で最も多い一方、5万円未満の合計も約5割でした[2]。同じ空き家でも、費用には大きな幅があります。この費用には、管理委託料、電気・ガス・水道などの契約費用、空き家までの交通費、税金などが含まれます[2]。まずは自分の空き家について、これらの項目ごとに実際の金額を書き出してみましょう。
同じ調査で管理をする上での課題を尋ねると、「管理の作業が大変」が31.7%、「管理費用の負担が大きい」が22.5%、「遠方に住んでいるので往訪が困難」が21.6%でした[2]。次の条件が重なると、年間費用は膨らみやすくなります。
遠方に住んでいる
実家が遠方にあると、見回りのたびに交通費と移動時間がかかります。台風や大雪のあとに様子を見に行く必要が出ると、予定外の出費も増えます。往復の交通費を年額にすると、思った以上の負担になることがあります。
建物の老朽化が進んでいる
雨漏り、外壁のひび割れ、給排水設備の故障などが重なると、突発的な修繕費が増えます。人が住まない家は換気や通水が減るため、傷みが進みやすい点にも注意が必要です。
売却・買取の比較に手を付けていない
売却や買取の査定を取らないまま保有を続けると、管理費用だけが毎年積み上がります。手放した場合にいくら手元に残るのかが分からないため、管理を続けるべきかどうかの判断も先送りになりがちです。
4自己管理と委託、どちらが向いているか
自己管理と委託のどちらが安いかは、所有者がどこに住んでいるかで大きく変わります。現金で払う費用に加えて、家族が負担する時間も含めて比べることが大切です。
自己管理が向いているケース
所有者が近くに住んでいる、建物の状態が良い、庭木や外構の手入れが軽い、将来使う予定がはっきりしている、といった場合は自己管理が向いています。換気、通水、郵便物の確認、庭木の確認を定期的に無理なく続けられるなら、しばらく自己管理で様子を見る選択もあります。ただし、家族の誰か一人に負担が偏ると長続きしにくくなります。
委託が向いているケース
遠方に住んでいる、庭木が隣地にはみ出すおそれがある、雨漏りや破損を早く見つけたい、近隣への対応を減らしたい、といった場合は管理委託が向いています。委託費は毎月かかりますが、誰も確認しない期間を減らせます。
比べるときの注意点
委託費は事業者や地域、見回りの頻度によって幅があります。複数社から見積もりを取り、自己管理の場合の交通費と移動時間も年額に直して並べると、実際の差が見えやすくなります。また、委託は管理の手間を減らす手段であって、空き家の出口ではありません。将来使う予定がないなら、委託費を払う期間を決めておくことが大切です。
5管理を先送りしない理由
政府広報オンラインでは、空き家の活用や適切な管理に向けた対策強化が説明されています。空き家は所有者が管理責任を持つ資産であり、放置すると周辺への影響が大きくなります。
6管理から家じまいへ切り替える基準
管理を続けるか、手放す方向に進むかは、期限を決めずに考えると先送りになりがちです。次の基準と手順で、定期的に見直すことをおすすめします。
切り替えを考える5つのサイン
年間の管理費用が重くなっている、近隣から連絡が来た、修繕費が増えてきた、家族に使う予定がない、売却査定を取っていない、の5つです。2つ以上当てはまるなら、管理を続けるだけでなく家じまいの相談を始めるタイミングです。
保有継続・売却・買取・解体を比べるポイント
保有を続けると将来使う余地は残りますが、年間費用の負担も続きます。仲介での売却は高く売れる余地がある一方、成約まで時間がかかる場合があります。買取は価格が低めになりやすいものの、短期間で条件が決まりやすく、管理費用の積み上がりを止めやすい選択肢です。解体は土地として売りやすくなるケースがありますが、先に解体費用がかかります。どれが有利かは地域差が大きいため、実際の査定や見積もりで比べてください。
年間費用を減らす3ステップ
①今かかっている費用を洗い出す、②次の12か月にかかりそうな費用を整理する、③売却・買取・解体の選択肢を同時に比べる、の順で進めると効果的です。委託費と突発的な修繕費を分けて把握すると、保有を続ける意味があるかどうかが見えやすくなります。見直し日を四半期ごとに決めておくと、先送りを防げます。
7よくある質問
Q1空き家の管理費用は年間いくら見ておくべきですか?
国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査では、年間の維持管理費用は「10〜20万円未満」が16.7%で最も多く、5万円未満の合計も約5割でした[2]。この費用には委託料、光熱費の契約、交通費、税金などが含まれますが、建物の大きさや状態、所在地、管理のしかたで大きく変わります。まずはご自身の空き家について、項目ごとに実際の金額で試算してください。
Q2空き家管理はどのくらいの頻度ですればよいですか?
法律などで決まった回数はありません。国土交通省の同調査では、管理者がいる空き家のうち「月に1〜数回」管理している世帯が34.0%で最も多く、月1回以上を合わせると約7割でした[2]。台風や大雪のあとは、普段より早めに確認すると安心です。遠方で定期的に通うのが難しい場合は、交通費と移動時間を年額にして、委託と比べてください。
Q3管理委託すれば安心ですか?
見回り・報告・緊急対応などリスクは減らせますが、建物の老朽化そのものは止まりません。委託で空白期間を減らしながら、出口方針(売却・買取・解体)を並行して考えることが重要です。
Q4自己管理と委託のどちらが安いですか?
物件近くに住んでいる場合は自己管理の現金支出が少なくなります。遠方の場合、移動費と時間コストを含めると委託の方が総負担が小さいケースがあります。委託費用は事業者や地域によって幅があるため、複数社から見積もりを取り、移動費と時間コストを年額換算したうえで比較してください。
Q5管理費用が重いと感じたら何から始めるべきですか?
仲介査定・買取査定・解体見積もりを同時期に取り、「管理継続の年間費用×想定保有期間」と「売却・解体後の手取り」を並べて比較してください。
Q6固定資産税だけ払っていれば問題ありませんか?
税金を払っていても、建物の管理責任は所有者にあります。庭木の越境、外壁の落下、雨漏りによる近隣への影響は税金とは別の問題です。定期的な外観確認は続けてください。
Q7解体してから売るべきでしょうか?
更地にした方が売りやすい地域もありますが、解体費用を売却額で回収できないケースもあります。解体する前に、建物付きのままでの査定も取って比べてください。
Q8家族で意見がまとまらないときはどう進めますか?
年間の管理費用、想定される売却額、保有を続ける年数ごとの収支を1枚にまとめると、感情論だけにならず話し合いが進みやすくなります。
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9まとめ:管理費用は内訳を見える化し、出口の期限とセットで考える
空き家の管理費用は、自己管理でも委託でも毎年かかり、金額は空き家によって大きく異なります。まずは税金・光熱費の契約・交通費・委託料・修繕費といった項目ごとに実際の金額を書き出し、年間の総額を見える化しましょう。将来使う予定がないなら、管理を続ける期間を決め、売却・買取・解体を比べて家じまいの出口を作ることが、後悔しない第一歩です。









