1. 実家を「売る」か「貸す」か、迷う理由と判断のポイント
親が亡くなったり施設に入ったりして実家が空き家になると、「売却」か「賃貸」のどちらにするか判断を迫られます。どちらにも一長一短があり、「正解」は物件の立地・状態・相続状況・家族の意向によって異なります。この記事では、費用・収益・手間・リスクの4軸で両者を比較し、状況別の判断基準を整理します。「とりあえず保有」で維持費だけが積み上がる前に、早めに方向性を検討することが重要です。
2. 売却と賃貸で比較すべき収支・リスク
| 比較項目 | 売却 | 賃貸 |
|---|---|---|
| 収入の出方 | 売却時にまとまった手取りを得られる。価格は地域の成約傾向や建物状態に左右される | 毎月の家賃収入を得られるが、空室期間があると収支が大きく変わる |
| 初期費用 | 仲介手数料、登記関連費用、譲渡費用などを確認する | リフォーム、設備交換、入居募集費用などが先に発生しやすい |
| 継続コスト | 売却後は固定資産税や修繕費などの継続負担から離れられる | 固定資産税、管理委託費、修繕費、火災保険などが続く |
| 手間 | 売却活動中の査定、内覧、契約対応が中心。成約後の管理負担はなくなる | 入居者対応、退去時の原状回復、設備故障への対応が継続する |
| 主なリスク | 希望価格で売れない、売却期間が延びる、市況によって価格が下がる | 空室、滞納、修繕費増加、入居者がいる状態で売りにくくなる |
| 向いている状況 | 遠方で管理が難しい、早く資金化したい、相続人間で整理したい | 立地や設備に賃貸需要があり、管理委託や修繕費を織り込める |
※ 金額の試算ではなく、売却と賃貸で確認すべき観点を整理した表です。実際の手取り額や賃貸収支は、地域、築年数、修繕状況、税務条件により異なります。
3. 売却のメリット・デメリット
売却の最大のメリットは、固定資産税・火災保険・修繕費といった維持コストが即座になくなり、まとまった現金を手にできる点です。管理の手間から解放され、遠方に住む相続人にとっては特に負担軽減効果が大きいと言えます。一方、デメリットとしては、仲介手数料(売買価格の3%+6万円が上限目安)や譲渡所得税が発生する場合がある点、また一度売却すると取り返しがつかない点が挙げられます。立地が良く将来の地価上昇が見込まれるエリアでは、売却を急がず賃貸で様子を見るという選択もあります。
4. 賃貸のメリット・デメリット
賃貸の主なメリットは、継続的な家賃収入を得ながら所有権を維持できる点です。将来的に自分や子が住む可能性が残る点も、売却にはない利点です。しかし賃貸には初期費用(リフォーム費・入居募集費)がかかる場合が多く、空室リスク・家賃滞納リスク・借主退去後の原状回復費用なども発生します。管理会社に委託する場合は家賃収入の5〜10%程度の管理手数料が一般的です。築年数が古い物件では入居者が集まりにくく、リフォーム投資が回収できないリスクも考慮が必要です。
5. 総務省調査が示す空き家の実態
2023年の住宅・土地統計調査によると、全国の空き家数は約900万戸、空き家率は13.8%に達し過去最高水準となっています。このうち賃貸用空き家は約459万戸で、空き室のまま放置された物件が相当数含まれると見られています。実家を安易に賃貸に出してもすぐに入居者が見つかるわけではなく、空室期間のコスト負担を事前に試算しておく必要があります。
6. 費用・手間・リスクを4軸で比較
「売却」と「賃貸」の違いを4軸で整理すると、①初期費用:売却は仲介手数料・登記費用が中心、賃貸はリフォーム・募集費用が発生しやすい。②継続コスト:売却後はゼロ、賃貸は管理費・修繕費が継続する。③手間:売却は手続き後に解放されるが、賃貸は入居者対応・管理が継続する。④リスク:売却は価格交渉・市況リスク、賃貸は空室・滞納・原状回復リスクがある。どの軸を重視するかは、所有者の生活状況や物件の条件によって異なります。
7. 状況別の判断基準
「売却が向いている状況」の目安としては、①遠方に住んでいて管理できない、②相続人が複数いて意見が分かれている、③建物が老朽化していてリフォーム費用が大きい、④早期に資金を確保したい——などが挙げられます。一方「賃貸が向いている状況」の目安は、①立地が良く賃貸需要が見込める、②将来自分や家族が住む可能性がある、③売却時の市況が悪く価格を下げたくない——などです。ただし「賃貸でうまくいかなければ売却」という二段階の判断は、建物の劣化と機会損失を招くリスクがあるため注意が必要です。
8. よくある質問
Q実家をまず賃貸に出してから、後で売却することはできますか?
A可能ですが、賃借人(入居者)がいる状態での売却は「オーナーチェンジ物件」となり、売却価格が下がる傾向があります。入居者の退去後に売却する場合は、退去交渉や原状回復に時間とコストがかかることがあります。
Q売却と賃貸、どちらが税負担が少ないですか?
A状況によって大きく異なるため、一概には言えません。売却では譲渡所得税が発生する場合がありますが、相続した不動産には特例が適用されるケースもあります。賃貸収入は不動産所得として課税対象になります。具体的な税務については税理士への相談をおすすめします。
Q築古の実家でも賃貸に出せますか?
A築年数が古い物件でも、立地・設備・リフォームの程度によっては入居者を見つけられる場合があります。ただしリフォーム費用が家賃収入で回収できるかの試算は事前に行うことが重要です。
Q親が施設に入っただけで、実家の名義はまだ親のままです。賃貸や売却はできますか?
A親が存命であれば親本人の同意が必要です。判断能力がある場合は委任状での対応が可能なケースもありますが、判断能力に不安がある場合は成年後見制度の利用が必要になることがあります。詳細は司法書士や弁護士への相談をおすすめします。
Q空き家のまま放置するとどうなりますか?
A固定資産税・火災保険・管理費などの維持コストが発生し続けます。また空き家特措法の「特定空き家」に認定されると固定資産税の住宅用地特例が解除され、税負担が大幅に増加する場合があります。建物の劣化も進み、将来の売却価格や賃貸収益にも影響が出る可能性があります。
Q賃貸に出す前に、どの程度リフォームが必要ですか?
A入居者確保のためのリフォーム範囲はエリアの賃貸相場や競合物件の状況によります。最低限の設備(給湯器・エアコン・水回り)が機能していれば賃貸募集できるケースもありますが、古い設備はトラブルの原因になりやすいため、賃貸管理会社に現地確認を依頼した上で判断することをおすすめします。
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10. まとめ:実家の「売る・貸す」判断は早めに整理を
実家を売るか貸すかの正解は一つではなく、物件の立地・状態・相続状況・家族の事情によって異なります。重要なのは「どちらが正解か」を探すより、維持コスト・手間・リスクを自分の状況に当てはめて比較することです。判断を先送りにするほど維持コストが積み上がり、建物の劣化が進む点には注意が必要です。まずは不動産会社に売却査定と賃貸募集条件の両方を確認し、数字を揃えた上で比較することをおすすめします。



