1農地付き空き家、処分の相談が増えている理由
「実家を相続したら、家の裏に畑や田んぼも付いていた」というケースは珍しくありません。総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年時点で全国の空き家数は過去最多の約900万戸、空き家率は13.8%に達しています。[1]地方部では宅地と農地が一体で相続されることが多く、家屋部分の空き家対策と、農地部分の農地法上の手続きを同時に検討しなければならない点が、処分を難しくしている一因です。
農地は宅地とは異なり、農地法により売買・貸借・転用のいずれについても農業委員会や都道府県知事等の許可(または届出)が必要です。「更地にして普通に売ればよい」という単純な話にはならないため、まずは家屋部分と農地部分を分けて、それぞれ何が必要かを整理することが出発点になります。本記事で紹介する内容は一般的な制度の説明であり、個別の許可要否・税務判断は、必ず農業委員会・行政書士・税理士・弁護士等の専門家に確認してください。
2農地付き空き家の処分方法:選択肢と特徴の比較
| 方法 | 概要 | 必要になりやすい手続き | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 家屋のみ売却・農地は保有継続 | 建物と宅地部分だけを売却し、農地は名義変更にとどめる | 農地を含む相続登記(2024年義務化) | 農地の管理義務は残る。耕作放棄地化すると自治体から利用意向の確認等を受ける場合がある |
| 農地を宅地等に転用してから売却 | 農地法4条・5条に基づき地目を転用し、宅地等として売却する | 農業委員会経由の申請、都道府県知事等(または指定市町村の長)の許可 | 区域区分等により許可が下りない場合もある。許可には一定の期間を要する |
| 農地のまま第三者へ売却・貸借 | 農地を農地のまま、担い手農家等へ売却・貸借する | 農地法3条に基づく農業委員会の許可 | 買い手・借り手は農業経営を行う者等に限られる場合が多い |
| 農地付き空き家バンクへの登録 | 自治体が運営する空き家バンクのうち、農地付き物件を扱う制度を利用する | 空き家バンクへの登録に加え、農地移転には別途農業委員会の許可 | 対応する自治体は限られる。登録しても成約が見込めるとは限らない |
| 相続土地国庫帰属制度の申請 | 要件を満たせば土地を手放し、国に引き取ってもらう | 法務局への申請、審査手数料・負担金の納付 | 農地であることのみを理由に却下されないが、境界未確定・管理を阻害する物がある場合等は不承認になり得る |
費用・期間・許可の可否は物件の状態、自治体、区域区分によって大きく異なります。個別の判断は農業委員会・行政書士等の専門家にご確認ください。
出典:農地法(e-Gov法令検索)・農林水産省「農地転用許可制度について」「農業委員会について」・法務省「相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」を参照し、編集部が選択肢を整理
3農地法による規制と農業委員会の役割
農地は農地法により、宅地とは異なる規制を受けます。農地の売買・貸借など権利移動には農地法3条に基づく農業委員会の許可が、農地を農地以外の用途に転用する場合には同法4条(自己所有地の転用)または5条(転用目的の権利移動)に基づく都道府県知事等の許可が必要です。[2]農林水産大臣が指定した市町村(指定市町村)では、都道府県知事に代わって市町村長が転用許可を行う仕組みもあります。[3]
農業委員会は市町村に設置された行政委員会で、農地法に基づく権利移動の許可審査に加え、転用案件への意見具申なども行っています。[4]許可を得ずに転用や権利移動を進めると、原状回復を求められる可能性があるため、「農地部分だけ先に造成して売ってしまう」といった進め方は避け、着手前に農業委員会や都道府県の担当窓口へ相談することが欠かせません。
市街化区域内の農地では、転用に際して届出で足りる場合があるなど取扱いが異なることもありますが、区域区分や自治体の運用によって扱いが変わるため、一律に断定はできません。個別の事案ごとに、農業委員会・行政書士等の専門家へ確認することをおすすめします。
4相続土地国庫帰属制度は農地付き空き家に使えるか
相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈で取得した土地を、一定の要件を満たした場合に国が引き取る制度で、2023年4月27日から始まりました。[5]農地であることだけを理由に申請が却下されるわけではなく、農地も要件を満たせば承認申請の対象になり得ます。[6]ただし、建物が残っている土地は原則として対象外とされているため、農地付き空き家の建物部分をそのままにして国庫帰属させることはできず、家屋の解体・除去が前提になります。[7]
また、境界が明らかでない土地、担保権等が設定されている土地、通常の管理や処分を阻害する工作物・車両等が存する土地、崖地で管理に過分な費用・労力を要する土地などは、却下・不承認事由に該当し得ます。[7]農地の場合は、土地改良法に基づく賦課金が発生している土地も引き取りの対象外とされています。[6]承認された場合の負担金は、市街化区域等の農地では面積に応じて算定され、一般的な農地では20万円が目安とされていますが、面積や区分によって変動するため、事前に法務局へ確認する必要があります。[6]
農地が国庫帰属できるかどうかは土地ごとの状態によって大きく異なるため、「農地だから国庫帰属できる」「農地だからできない」と一律に判断せず、法務局の相談窓口で個別に確認することをおすすめします。
5クラッソーネができること、専門家に任せるべきこと
クラッソーネは、空き家の解体・家じまい支援を中心としたサービスを提供していますが、農地の転用手続きや農業委員会への許可申請そのものを代行するサービスではありません。農地付き空き家の処分を進める際は、次のような役割分担で考えることが現実的です。
家屋部分については、解体の要否判断、解体費用の見積もり比較、遺品整理を含めた家じまい全体の進行支援を、クラッソーネの相談窓口やシミュレーターで確認できます。一方、農地部分については、農地法上の許可要否の判断、農業委員会への申請書類の作成、転用許可の申請手続きは、行政書士や農業委員会の窓口が担う領域です。
「実家に農地が付いている」というだけで一括して進められる制度ではないため、まずは家屋と農地を切り分けて、それぞれの担当窓口に相談することが結果的に無理のない進め方になりやすいといえます。クラッソーネの相談窓口では、家屋部分の解体・売却・活用の選択肢を整理したうえで、農地に関する専門家への橋渡しも案内しています。
6処分を進める際の費用・手続き・注意点
農地付き空き家の処分は、家屋と農地でそれぞれ確認すべき事項が異なります。
家屋部分の費用目安
木造住宅の解体費用は延床面積や立地によって変わり、自治体によっては老朽化した危険な空き家の解体費用を一部助成する制度もありますが、要件は自治体ごとに異なります。売却によって利益(譲渡所得)が出た場合、一定の要件を満たせば「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」として最大3,000万円の控除の対象になり得ますが、[8]適用要件の判定は税理士・税務署への確認が必要です。
農地部分の手続き
農地を含む相続登記は2024年4月から義務化されており、相続を知った日から3年以内の申請が必要です。[9]農地を転用・売却・貸借する場合は、事前に農業委員会へ相談し、必要な許可(農地法3条・4条・5条のいずれに該当するか)を確認します。許可を得ずに転用や権利移動を進めることは避けてください。
注意点
農地の管理を怠り耕作放棄地化すると、自治体から利用意向の確認や指導を受ける場合があります。空き家バンクに登録する場合も、農地の移転には登録とは別に農業委員会の許可が必要になる点を忘れないでください。税務・農地の優遇制度(生産緑地、相続税の納税猶予等)についても、要件を満たすかどうかは個別に異なるため、税理士等の専門家に確認することをおすすめします。
7よくある質問
Q1農地付き空き家は、家だけ売って農地は残すことができますか?
制度上は可能ですが、農地の管理義務は残るため、耕作放棄地化しないよう注意が必要です。買い手側の意向にもよるため、不動産会社や農業委員会に事前相談することをおすすめします。
Q2農地を宅地に転用してから売れば自由に売却できますか?
転用には農地法4条・5条に基づく許可が必要で、[2]区域区分(市街化区域か市街化調整区域か等)により許可の得やすさが異なります。許可が下りるとは限らないため、事前に農業委員会へ確認してください。
Q3相続土地国庫帰属制度を使えば農地は無償で手放せますか?
農地であることのみを理由に却下されるわけではありませんが、家屋が残っている土地は対象外で、境界未確定や管理を阻害する物がある場合等は不承認になり得ます。承認されても審査手数料・負担金の納付が必要です。
Q4農地付き空き家バンクに登録すれば買い手が見つかりますか?
農地付き空き家バンクを運用する自治体もありますが、登録してもすぐに成約するとは限りません。農地の移転には登録とは別に農業委員会の許可が必要です。
Q5農地の相続登記もしなければなりませんか?
はい。2024年4月から相続登記が義務化されており、農地も対象です。相続を知った日から3年以内に申請する必要があります。[9]
Q6クラッソーネに相談すれば農地の転用手続きも任せられますか?
クラッソーネは家屋の解体・家じまい支援が中心で、農地の転用許可申請そのものは行政書士や農業委員会が担う領域です。家屋部分のご相談と合わせて、農地部分は専門家への橋渡しをご案内しています。
Q7農地の税金の優遇制度はそのまま使えますか?
生産緑地や相続税の納税猶予など農地特有の税務優遇制度がありますが、適用要件は個別の土地・利用状況によって異なります。断定的な判断はできないため、税理士に確認することをおすすめします。
Q8農地付きの相続した空き家を買取してもらう手続きは?
家屋部分については、相続登記を済ませたうえで[9]、買取業者に査定を依頼する流れが一般的です。ただし農地部分は農地法上の許可が必要になる場合があり、買取の対象になるかどうかは業者や自治体によって異なります。まずは家屋と農地を分けて相談することをお勧めします。
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9まとめ:家屋と農地を分けて、それぞれの専門家に相談する
農地付き空き家の処分は、家屋部分の空き家対策と、農地部分の農地法上の手続きという、性質の異なる二つの課題を同時に扱う必要があります。農地は農業委員会や都道府県知事等の許可が絡むため、宅地と同じ感覚で「売る」「転用する」と決めることはできません。相続土地国庫帰属制度についても、農地だから使える・使えないと単純に判断せず、土地ごとの状態を確認することが重要です。
まずは、①農地を含む相続登記を早期に済ませること、②家屋部分と農地部分それぞれの選択肢を整理すること、③農地の許可要否や税務の判断は農業委員会・行政書士・税理士等の専門家に確認することから始めてください。クラッソーネの相談窓口では、家屋部分の解体・売却・活用の整理と、農地に関する専門家への橋渡しをご案内しています。









