コラム一覧/空き家売却で3,000万円控除を受けるには?確定申告の手順と必要書類
古い空き家と確定申告の書類・印鑑を並べたイメージ写真

2026-06-18 更新

空き家売却で3,000万円控除を受けるには?確定申告の手順と必要書類

相続した空き家の売却で最大3,000万円の特別控除(空き家特例)を受けるための要件確認、確定申告の手順、必要書類を分かりやすくまとめました。申告期限や注意点も解説します。

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1. 相続した空き家を売却した場合、確定申告は必要か

総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年時点で全国の空き家は約900万戸・空き家率13.8%と過去最多水準に達しています。親を亡くした後に実家が空き家になり、売却を検討する方は年々増えています。

相続した空き家を売却して利益(譲渡所得)が生じた場合は、翌年の確定申告が原則として必要です。さらに、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(以下、空き家特例)」を適用したい場合も、申告書への記載と書類添付が欠かせません。

空き家特例を使えば、一定の要件を満たした売却では譲渡所得から原則最大3,000万円(相続人が3人以上の場合は最大2,000万円)を控除できます。売却益がこの控除額以下であれば、課税額がゼロになる場合もあります。ただし、申告手続きを正しく行わなければ特例は適用されません。この記事では、確定申告の流れと必要書類を中心に解説します。なお、具体的な税務判断は税理士にご相談ください。

2. 空き家特例(3,000万円控除)の主な適用要件

確定申告の準備を始める前に、空き家特例の適用要件を確認することが重要です。要件をひとつでも満たさない場合、特例は受けられません。以下は主な要件の概要です(詳細は国税庁の公式情報や税理士にご確認ください)。

【要件1】相続または遺贈で取得した家屋・土地であること

売却する不動産が、相続または遺贈(遺言による贈与)によって取得されたものである必要があります。

【要件2】被相続人が相続直前まで一人で居住していたこと

亡くなる直前まで被相続人本人が住んでいた家であることが原則です。ただし、一定の要件を満たす介護施設(老人ホームなど)への入居後に空き家になっていた場合も対象となる場合があります。

【要件3】昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること

旧耐震基準で建てられた建物が対象です。昭和57年以降に建築された建物は原則として対象外となります。

【要件4】相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること

たとえば2022年3月に相続が開始した場合、2025年12月31日までの売却が期限となります。この期限を過ぎると特例は使えません。

【要件5】売却価格が1億円以下であること

1億円を超える売却には本特例は適用されません。

【要件6】売主または買主が耐震改修または取壊しを行うこと

売主が引き渡しまでに家屋を耐震基準に適合させるか、取壊しを行う必要があります。2024年以降の改正により、買主が譲渡の翌年2月15日までに対応するケースも対象に含まれるようになりました。この場合は確定申告後に証明書類の提出が必要になることがある点に注意してください。

要件の確認が難しいと感じたら、売却前の段階で税理士に相談することをお勧めします。

3. 空き家特例の主な適用要件まとめ

要件内容注意点
取得方法相続または遺贈で取得購入・贈与(相続以外)は対象外
被相続人の居住状況相続直前まで一人居住が原則老人ホーム等への入居は一定要件で対象
建築時期昭和56年5月31日以前に建築昭和57年以降の建物は原則対象外
売却期限相続開始から3年経過する年の12月31日まで期限超過で特例は使えない
売却価格1億円以下1億円超は対象外
建物の状態耐震改修または取壊し(売主or買主)買主対応は翌年2月15日が期限
控除上限原則最大3,000万円相続人3人以上は最大2,000万円

2026年6月時点の概要です。要件の詳細・例外規定は国税庁公式情報または税理士にご確認ください。

出典:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例を基に編集部作成

4. 確定申告の手順(ステップごとの流れ)

空き家特例を適用するための確定申告の流れを、ステップごとに整理します。

【ステップ1】書類を収集する(売却前〜売却後すぐ)

必要書類(後述)の多くは、売却前に準備できるものが大半です。特に取得費の根拠資料(購入時の契約書など)は紛失しやすいため、相続した段階から早めに探しておきましょう。

【ステップ2】売却時の書類を整理する

売買契約書の写し・仲介手数料の領収書・登記費用の領収書などを保管します。解体を行った場合は解体費用の領収書と解体証明書も必要です。

【ステップ3】耐震証明または取壊し証明を準備する

特例の要件として、家屋が耐震基準に適合していることを証明する書類(耐震診断結果報告書・耐震改修証明書等)、または取壊し完了を証明する書類(滅失登記の登記事項証明書等)が必要です。2024年以降の改正で買主が対応する場合は、申告後に追加書類の提出を求められることがあります。

【ステップ4】確定申告書を作成する(翌年2月16日〜3月15日)

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」(e-Tax)を利用すると、画面の案内に沿って申告書を作成できます。譲渡所得の計算と特例適用の記載が必要です。申告期限は翌年3月15日です。期限を過ぎると無申告加算税・延滞税が生じる可能性があります。

【ステップ5】申告書と必要書類を提出する

申告書に必要書類を添付し、e-Taxでオンライン提出するか、管轄の税務署に持参・郵送します。e-Taxを利用する場合でも、書類の一部は別途郵送が必要なケースがあります(提出方法の詳細は国税庁公式サイトでご確認ください)。

【ステップ6】税額を納付する

申告の結果、納税額が生じる場合は3月15日までに納付します。振替納税を設定している場合は引き落とし日が別途設定されています。

5. 確定申告に必要な書類一覧

空き家特例を適用する場合の確定申告には、通常の不動産売却の申告に比べて多くの書類が必要です。事前に一覧を把握しておくと、書類の取り寄せがスムーズです。

■ 売却・取得に関する書類

  • 売買契約書(売却時)のコピー
  • 売買契約書(被相続人が取得した際)のコピー ※資料がない場合は概算取得費で対応
  • 登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 仲介手数料・諸費用の領収書
  • ■ 相続・居住の実態を証明する書類

  • 被相続人の除票住民票または戸籍の附票(相続直前の居住を証明)
  • 相続人の住民票
  • 遺産分割協議書のコピー(複数相続人の場合)
  • ■ 建物の状態に関する書類(いずれかまたは両方)

  • 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書(耐震改修済みの場合)
  • 建物の登記事項証明書の滅失登記 または 取壊し証明書(更地売却の場合)
  • ■ 特例申請に使う証明書類

  • 「被相続人居住用家屋等確認書」(市区町村の窓口で申請・取得)
  • →これは市区町村が発行する書類で、家屋が被相続人の居住用だったことや相続後に居住・貸付けに使われていないことを証明します。発行までに日数がかかる場合があるため、早めに申請しましょう。

    これらに加え、申告書の「確定申告書B」と「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表)」が必要です。なお、書類の最新様式・提出部数・添付方法は国税庁の公式サイトまたは税務署窓口でご確認ください。

    6. 空き家特例の申告で必要な「被相続人居住用家屋等確認書」とは

    この特例の適用を受けるためには、確定申告書に「被相続人居住用家屋等確認書」(市区町村長が発行)を添付する必要があります。確認書は、売却した家屋が被相続人の居住の用に供されていたことや、相続後に居住・貸付けの用に供されていないことなどを市区町村が確認した書類です。

    7. 申告期限と注意すべきポイント

    空き家特例を利用した確定申告では、いくつかの期限と注意点があります。

    ■ 確定申告の期限

    売却した年の翌年2月16日〜3月15日が確定申告の受付期間です。申告期限を過ぎると、特例の適用ができなくなるうえ、無申告加算税(原則として納付税額の15〜20%相当)や延滞税が生じる可能性があります。

    ■ 相続税の申告期限との関係

    相続税の申告・納税は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」に行う必要があります(相続税法に基づく規定)。空き家の売却時期によっては、相続税の申告と譲渡所得の確定申告が重なる場合があります。両方の手続きを把握し、漏れなく対応することが大切です。

    ■ 空き家特例と相続税の取得費加算特例は原則として併用できない

    相続税を支払った場合、相続税額の一部を譲渡所得の取得費に加算できる「取得費加算の特例」があります。この特例と空き家特例(3,000万円控除)は原則として同時に使えません。どちらを選ぶかは状況によって有利不利が変わるため、税理士への相談が欠かせません。

    ■ 買主対応の2024年改正に関する注意

    2024年1月1日以後の譲渡から、買主が譲渡日の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを行った場合も特例対象となりました。この場合、売主は確定申告時に「買主が対応予定である」旨の書類等を添付する必要があり、その後に追加の書類提出を求められることがあります。詳細は国税庁の最新情報または税理士にご確認ください。

    ■ 相続人が3人以上の場合は控除上限が変わる

    2024年1月1日以後の譲渡で、相続人の数が3人以上いる場合、1人あたりの控除上限が最大2,000万円となります(原則は最大3,000万円)。

    8. よくある質問

    Q特例の適用を受けるために、いつまでに何を準備すればよいですか?

    A「被相続人居住用家屋等確認書」は市区町村への申請が必要で、発行まで数週間かかる場合があります。売却後すぐに申請手続きを開始し、確定申告の期限(翌年3月15日)に余裕を持って書類を揃えることをお勧めします。

    Q相続した家の購入時の契約書が見当たらない場合、どうすればよいですか?

    A被相続人が購入した当時の売買契約書が見つからない場合は、売却価格の5%を概算取得費として使うことができます。ただし実際の取得費が5%を大きく上回る場合は税負担が増える可能性があるため、登記簿・通帳・固定資産税の課税台帳など取得費を示せる資料を探してみましょう。

    Q確定申告はe-Taxでできますか?

    Aはい。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使ってオンライン(e-Tax)で申告書を作成・提出できます。ただし「被相続人居住用家屋等確認書」など一部の添付書類は郵送が必要な場合があります。詳細は国税庁サイトでご確認ください。

    Q空き家を更地にして売却した場合と建物付きのまま売った場合で手続きは変わりますか?

    A空き家特例の要件として耐震改修または取壊しが必要なため、多くのケースで更地売却(解体後売却)が選ばれます。更地売却の場合は解体証明書・滅失登記の登記事項証明書を準備します。建物付きの場合は耐震基準適合証明書が必要です。なお、解体費用は譲渡費用として計上できるため、課税所得を減らす効果があります。

    Q親が老人ホームに入居していた場合でも特例は使えますか?

    A介護保険法等に基づく施設への入居後に家屋が空き家になっていた場合など、一定の要件を満たせば対象となるケースがあります。居住実態の証明書類が別途必要になる場合があるため、税理士または国税庁の公式情報で要件を確認してください。

    Q兄弟で共有している不動産を売った場合、それぞれ特例を申請できますか?

    A共有持分ごとに特例を申請できる場合がありますが、各相続人がそれぞれ要件を満たしている必要があります。確定申告も各自が行います。共有名義の手続きは複雑になりやすいため、早めに税理士に相談することをお勧めします。

    Q確定申告後に税務調査が来ることはありますか?

    A不動産の売却に関する申告は確認されることがあります。申告内容に誤りがないよう、書類を正確に揃えて申告することが大切です。書類の保管期間についても税理士に確認しておくと安心です。

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    10. まとめ

    相続した空き家の売却で空き家特例(3,000万円控除)を受けるには、要件確認・書類準備・確定申告という3つのステップを正しく進めることが重要です。

    主なポイントをまとめます。

  • 空き家特例は旧耐震建物・相続開始から3年以内の売却・1億円以下の売却価格など複数の要件がある
  • 控除上限は原則最大3,000万円(相続人が3人以上の場合は最大2,000万円)
  • 申告には「被相続人居住用家屋等確認書」(市区町村発行)が必要で、取得に時間がかかる場合がある
  • 確定申告の期限は翌年3月15日。期限を過ぎると特例は使えず、加算税・延滞税が発生する可能性がある
  • 相続税の取得費加算特例との原則併用不可に注意する
  • 取得費の資料がない場合は概算取得費(売却価格の5%)を使えるが、税負担が増える場合がある
  • 手続きは複雑で、書類の準備から申告まで数か月かかることもあります。売却を検討し始めた段階で早めに税理士に相談し、要件・必要書類・期限を整理しておくことを強くお勧めします。クラッソーネでは空き家や家じまいに関するご相談をお受けしています。まずはお気軽にご相談ください。

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    参考資料

    1. 令和5年住宅・土地統計調査 / 総務省統計局 / 2024-04-30

      原典URL: https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/tyousake.html

      根拠: 2023年時点で全国の空き家数は過去最多の900万戸・空き家率13.8%に達しており、相続を機に空き家化するケースが増えている

    2. 相続税の申告と納税 / 国税庁 / 2025-04-01

      原典URL: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm

      根拠: 相続税の申告・納税は相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要がある、空き家特例の確定申告期限(翌年2月16日〜3月15日)と相続税申告期限(10か月以内)の両方を把握する必要がある

    3. 地方税法 / e-Gov法令検索

      原典URL: https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226

      根拠: 不動産売却に係る住民税(道府県民税・市町村民税)の根拠規定、譲渡所得に対する住民税率(長期5%・短期9%)の根拠

    4. No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 / 国税庁 / 2025-04-01

      原典URL: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm

      根拠: 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例では、一定要件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を控除できる、2024年1月1日以後の譲渡では、相続人が3人以上の場合の控除上限が最大2,000万円となる、特例適用には被相続人居住用家屋等確認書などの添付書類が必要である

    監修・著者情報

    空き家先生 川口哲平

    空き家先生 川口哲平(監修)

    全国空き家対策コンソーシアム 代表理事 / 株式会社クラッソーネ 代表取締役CEO

    空き家先生のX

    経歴

    空き家先生・全国空き家対策コンソーシアム代表理事・クラッソーネCEO。名古屋出身、京都大学卒業後、セキスイハイムを経てクラッソーネを設立。その後、全国空き家対策コンソーシアムを設立。

    著者:クラッソーネ編集部