1. 空き家を売ったら、確定申告は必要になる?
実家を相続し、空き家のまま抱えるのではなく売却を決めた——そんな場面で気になるのが「確定申告は必要なのか」という点です。結論から言うと、確定申告が必要かどうかは、空き家を売って得た利益(譲渡所得)が出たかどうかによって変わります。総務省「令和5年住宅・土地統計調査」でも、全国の空き家は過去最多水準にあるとされており、相続をきっかけに空き家になり、売却を検討する方は少なくありません。
この記事では、空き家を売った後の確定申告について、次の点を整理します。
1. 確定申告が必要になるケース・不要になるケースの見分け方
2. 混同されやすい「準確定申告」と、相続人自身が行う「確定申告」の違い
3. 取得費が分からない場合の概算取得費の扱い
4. 確定申告の一般的な流れ(e-Taxと書面提出の違い、必要書類の全体像)
譲渡所得の考え方や税率、特例制度の全体像は「空き家を売ったときの税金」で、空き家特例を受けるための確定申告の手順・必要書類は「空き家売却で3,000万円控除を受けるには?」で詳しく解説しているため、この記事ではあわせて参照しながら、確定申告そのものの手続き実務にしぼって整理します。なお、この記事は一般的な手続きの流れをまとめたものであり、個別の税務判断は税理士にご確認ください。
2. 空き家を売って確定申告が必要になるケース・不要なケース
確定申告が必要かどうかを判断する出発点は、譲渡所得(売却による利益)がプラスかマイナスかです。
譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用
この計算結果がプラスになった場合は、原則として翌年に確定申告が必要です。空き家特例(3,000万円控除)などの特別控除を使って税額がゼロになる見込みの場合でも、控除の適用を受けるためには確定申告が必要になる点に注意してください。
一方、売却価格より取得費・譲渡費用の合計のほうが大きく、譲渡所得がマイナス(譲渡損失)になった場合は、その空き家の売却について確定申告をする必要は原則としてありません。ただし、マイホームの買換え等で認められている譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例は、相続した空き家の売却には原則として適用されない点もあわせて押さえておきましょう。
また、給与所得や年金所得の状況によっては、空き家の売却とは別の事情で確定申告が必要になっている場合もあります。判断に迷う場合は、税務署や税理士に確認することをおすすめします。
3. 確定申告の要否をケースで確認
| ケース | 確定申告の要否 |
|---|---|
| 売却で譲渡所得がプラスになった | 原則として必要 |
| 空き家特例などの適用で税額がゼロになる見込み | 特例を適用するために必要 |
| 売却で譲渡所得がマイナス(譲渡損失)になった | 原則不要(損益通算等は使えない場合が多い) |
譲渡所得のプラス・マイナスの基本的な考え方と、特例適用時の申告要否を編集部で整理したものです。個別の要否判断は税務署・税理士にご確認ください。
出典:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 等を基に編集部作成
4. 「準確定申告」と相続人自身の「確定申告」は別物
空き家を売却した後の申告を調べていると、「準確定申告」という言葉を目にすることがあります。これは、亡くなった人(被相続人)自身の所得について、相続人が代わりに行う確定申告のことです。国税庁の案内によると、被相続人が死亡した場合の確定申告(準確定申告)は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に行う必要があります。これは被相続人が生前に得ていた給与・年金・事業所得などについての申告であり、相続人が空き家を売って得た譲渡所得の申告とは対象が異なります。
一方、相続人が空き家を売却して得た譲渡所得についての確定申告は、売却した年の翌年(原則として2月16日から3月15日まで)に、相続人自身の名前で行う手続きです。準確定申告が「亡くなった人の申告」であるのに対し、こちらは「売却した相続人自身の申告」という違いがあります。
この2つの申告は目的も期限も異なるため、混同すると準確定申告の期限(4か月以内)を見落としたり、逆に空き家売却の申告時期を早合点したりすることがあります。相続後は、まず準確定申告が必要かどうかを確認し、そのうえで空き家を売却した年の翌年に自分自身の確定申告を行う、という順序で整理しておくとわかりやすいでしょう。
5. 準確定申告と相続人自身の確定申告の違い
| 項目 | 準確定申告 | 相続人自身の確定申告(空き家売却分) |
|---|---|---|
| 対象になる所得 | 被相続人(亡くなった人)が生前に得ていた所得 | 相続人が空き家を売却して得た譲渡所得 |
| 申告する人 | 相続人(被相続人に代わって申告) | 相続人本人 |
| 申告期限 | 相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内 | 売却した年の翌年2月16日〜3月15日(原則) |
| 申告が必要になるきっかけ | 被相続人の死亡 | 空き家売却による譲渡所得の発生 |
準確定申告の期限は国税庁の案内に基づく整理です。相続人自身の確定申告の期間は原則の期間であり、その年の申告受付期間により前後する場合があります。
出典:国税庁 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)を基に編集部作成
6. 取得費が分からない場合の「概算取得費」の扱い
相続した空き家は、被相続人が購入した当時の契約書や領収書が残っていないことが少なくありません。取得費が分からない場合、国税庁の案内では「売った金額の5%相当額」を取得費として使うことができるとされています。実際の取得費が売却価格の5%相当額を下回る場合も、同様に5%相当額を取得費とすることができます。
たとえば、土地建物を3,000万円で売却し、取得費が分からない場合には、売却価格の5%相当額である150万円を取得費として計算に使うことができます。ただし、概算取得費は実際の取得費よりも低くなりやすく、その分だけ課税対象になる譲渡所得が大きくなる可能性がある点には注意が必要です。
概算取得費を使う前に、次のような資料が残っていないか確認しておくことをおすすめします。
- 被相続人が購入した際の売買契約書
- 購入時の領収書や振込記録
- 登記事項証明書に記載された取得の経緯
- 固定資産税の課税明細書など、取得時期を推測できる資料
これらの資料が見つかれば、実際の取得費を使って申告できる可能性があります。譲渡所得税の具体的な計算方法(取得費・譲渡費用の考え方)は「空き家を売ったときの税金」で詳しく解説しています。
7. 確定申告の一般的な流れ(e-Tax・書面・必要書類の全体像)
空き家の売却に伴う確定申告は、次のような流れで進めるのが一般的です。
【ステップ1】必要書類を集める
売買契約書(売却時・取得時)、登記事項証明書、仲介手数料や解体費用の領収書、取得費が分かる資料(または概算取得費で対応)などを準備します。相続に関する書類(被相続人の除票住民票や戸籍の附票など)が必要になる場合もあります。
【ステップ2】e-Taxを使うか、書面で作成するかを決める
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使うと、画面の案内に沿って金額を入力するだけで、譲渡所得の内訳書などの付表も自動的に作成されます。e-Taxで電子提出するほか、作成した申告書を印刷して税務署へ持参・郵送することもできます。パソコン操作に不安がある場合は、税務署の窓口や確定申告期間中の申告会場で相談しながら書面で作成する方法もあります。
【ステップ3】申告期間内に提出する
確定申告の申告期間は、原則としてその年の翌年2月16日から3月15日までです。期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が生じる可能性があるため、余裕をもって準備することが大切です。
【ステップ4】納税する(納税額が生じる場合)
申告の結果、納める税額が生じる場合は、申告期限までに納付します。振替納税を利用している場合は、引き落とし日が別途設定されます。
空き家特例(3,000万円控除)など個別の特例を使う場合は、上記に加えて特例専用の添付書類が必要になります。特例の要件・必要書類・申告の具体的な進め方は「空き家売却で3,000万円控除を受けるには?」で詳しく整理していますので、該当する場合はあわせてご確認ください。
8. 3,000万円控除など個別の特例を使いたい場合は
相続した空き家が旧耐震基準の建物であるなど一定の条件を満たす場合、「空き家特例(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除)」を使うと、譲渡所得から一定額を控除できる場合があります。ただし、この特例には建築時期・売却期限・耐震改修や取壊しの実施など複数の要件があり、確定申告の際にも専用の添付書類(被相続人居住用家屋等確認書など)が必要です。
この記事では、個別の特例の要件や必要書類までは深掘りしません。特例の適用を検討している場合は「空き家売却で3,000万円控除を受けるには?確定申告の手順と必要書類」で要件と申告手順を確認し、譲渡所得税の計算方法や税率の全体像は「空き家を売ったときの税金」であわせて確認することをおすすめします。
9. よくある質問
Q空き家を売って赤字(譲渡損失)だった場合も確定申告は必要ですか?
A譲渡所得がマイナスになった場合、その売却について確定申告をする必要は原則としてありません。ただし、マイホームの買換え等で認められている損益通算・繰越控除の特例は、相続した空き家の売却には原則として適用されない点に注意してください。
Q準確定申告と、自分自身の確定申告の両方が必要になることはありますか?
A被相続人が亡くなった年に一定の所得があった場合は準確定申告が必要になり、その後、相続人が空き家を売却して譲渡所得が生じた年には別途、相続人自身の確定申告が必要になります。時期も対象も異なる別の手続きのため、両方が必要になるケースは珍しくありません。
Q概算取得費(5%)を使うと税金は必ず増えますか?
A実際の取得費が売却価格の5%相当額を上回っていた場合、概算取得費を使うと課税対象になる譲渡所得が大きくなり、税負担が増える可能性があります。契約書や登記事項証明書など、実際の取得費が分かる資料が残っていないか、売却前に確認しておくことをおすすめします。
Q確定申告はe-Taxと紙のどちらで行うべきですか?
Aどちらでも申告は可能です。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使うと、画面の案内に沿って入力するだけで譲渡所得の内訳書なども作成でき、e-Taxでオンライン提出もできます。パソコン操作に不安がある場合は、印刷した申告書を税務署に持参・郵送する方法や、申告会場での相談も利用できます。
Q確定申告をしないとどうなりますか?
A申告が必要な譲渡所得があるにもかかわらず期限内に申告しなかった場合、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。空き家特例などの特別控除も、申告をしなければ適用を受けられません。
Q3,000万円控除を使う場合、確定申告の基本的な流れは変わりますか?
A書類収集・申告書作成・申告期間内の提出という基本的な流れは同じです。ただし、特例を使う場合は被相続人居住用家屋等確認書などの追加書類が必要になります。詳しい手順は「空き家売却で3,000万円控除を受けるには?」で確認してください。
Q相続した空き家を兄弟で共有していた場合、確定申告はどうなりますか?
A共有名義の場合、各共有者がそれぞれ自分の持分に応じた譲渡所得について確定申告を行うのが基本です。共有名義の申告は書類や按分の考え方が複雑になりやすいため、早めに税理士へ相談することをおすすめします。
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11. まとめ
空き家を売った後の確定申告は、まず譲渡所得がプラスかマイナスかを確認することから始まります。
重要なポイントを整理すると、
空き家特例(3,000万円控除)など個別の特例を使いたい場合は、要件確認と必要書類の準備に時間がかかることがあります。まずは今回整理した確定申告の全体像を押さえたうえで、該当する場合は「空き家売却で3,000万円控除を受けるには?」を確認し、判断に迷う点は早めに税理士や税務署に相談することをおすすめします。



