コラム一覧/空き家が近隣トラブルの原因に…責任範囲と具体的な対処法
老朽化した空き家と周辺住宅の様子をイメージした写真

2026-06-18 更新

空き家が近隣トラブルの原因に…責任範囲と具体的な対処法

空き家の草木・ゴミ・倒壊リスクが原因で近隣トラブルが発生するケースが増えています。空き家所有者の法的責任範囲、苦情への対応手順、トラブルを防ぐ管理方法を解説します。

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1. 空き家が近隣トラブルの原因になる主なケース

総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、2023年時点で全国の空き家数は900万戸、空き家率は13.8%と過去最多水準に達しています。空き家が増えるにつれて、周辺住民との間でさまざまなトラブルが生じるケースも増えています。

主なトラブルの原因として、次のようなものが挙げられます。

草木の越境・枝や根の侵入

放置された庭や敷地の草木が伸び放題になり、隣地や道路へ越境するケースがあります。枝が隣の敷地に入り込んで日照を遮ったり、根が塀や外構を傷めたりすることで、隣人から苦情が来ることがあります。

ゴミの不法投棄・悪臭

空き家は人の目が届きにくいため、不法投棄の標的になりやすい傾向があります。敷地内にゴミが積み重なると悪臭や害虫の発生源となり、周辺住民の生活環境を大きく損なうことがあります。

建物の老朽化・倒壊リスク

長期間管理されていない建物は、外壁材の落下、屋根の崩落、塀の傾きなどのリスクを抱えます。台風や地震が発生した際に、近隣の建物や通行人に被害をおよぼす可能性があります。

不審者の出入り・防犯上の問題

空き家は不法侵入や放火の被害を受けやすく、地域の防犯水準の低下につながるとして、近隣住民が不安を感じるケースもあります。

いずれのケースでも、「管理されていない空き家がある」という事実が近隣にとってのストレスになります。所有者としては、問題が表面化する前に対処することが重要です。

2. 近隣トラブルの種類と所有者が負う可能性のある責任

トラブルの種類根拠となる法律・制度所有者のリスク
草木の越境・損害民法(工作物責任・不法行為責任)損害賠償請求・原状回復費用の負担
建物の倒壊・外壁落下民法717条(工作物責任)人身・財物への損害賠償責任
特定空家・管理不全空家の指定空家等対策特別措置法勧告・命令・行政代執行・固定資産税の住宅用地特例の適用除外
不法投棄・害虫発生廃棄物処理法・各自治体の条例行政指導・是正命令・費用負担

個別の事案によって責任範囲は異なります。具体的な判断は弁護士や自治体の相談窓口へご確認ください。

出典:国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報、e-Gov 民法を基に編集部作成

3. 空き家所有者の法的責任範囲

空き家を所有している場合、「管理しているつもりがなくても法的な責任を負う」ケースがあります。主な根拠となる法律を整理します。

民法上の工作物責任(民法717条)

建物や塀など「土地の工作物」の設置・保存に瑕疵(欠陥)があって他者に損害を生じさせた場合、まず占有者が賠償責任を負い、占有者が無過失を証明できた場合は所有者が責任を負います。空き家に誰も住んでいない場合、所有者が直接責任を問われる可能性があります。

不法行為責任(民法709条)

故意または過失によって他人の権利や利益を侵害した場合、損害賠償責任が生じます。草木の越境や建物の老朽化を放置して隣人に損害を与えたと判断された場合には、この条項が根拠となることがあります。

空家等対策特別措置法に基づく行政措置

国土交通省が公開している空家等対策特別措置法関連情報によると、管理が不十分な空き家は市区町村から「特定空家」または「管理不全空家」として認定される可能性があります。認定されると、助言・指導→勧告→命令→行政代執行というステップで対応が進みます。

2024年の空き家対策強化(国土交通省)により、「管理不全空家」の認定要件が整備され、特定空家に至る前の段階でも自治体が勧告を出しやすくなりました。

勧告を受けると固定資産税が上がる

住宅の建つ土地には「住宅用地特例」として固定資産税が最大1/6に軽減される仕組みがあります(地方税法)。ただし、特定空家に指定されて勧告を受けると、この軽減措置の適用が外れます。管理不全が続くと、固定資産税の実質的な増加につながる点は見落としやすいリスクです。

4. 近隣から苦情を受けたときの対応手順

近隣住民や自治体から苦情・通知が届いた場合、放置すると問題が悪化します。以下の手順で速やかに対応することが重要です。

ステップ1:現地を確認する

まず実際に空き家を訪問し、苦情の内容が実態に合っているかを確認します。遠方に住んでいる場合は、管理委託業者や信頼できる地元の知人に依頼することを検討してください。

ステップ2:自治体の担当窓口に相談する

市区町村には空き家対策の担当部署が設けられているケースが増えています。苦情内容の確認や適切な対処法のアドバイスを受けられることがあります。行政代執行に至る前の段階での相談は、所有者にとってもリスクを減らす機会になります。

ステップ3:専門業者に対処を依頼する

草木の剪定・除草は造園業者や草刈り業者、建物の補修は工務店、不法投棄物の処理は廃棄物処理業者など、トラブルの種類に応じた専門業者に依頼します。費用は所有者の負担となりますが、放置して損害賠償請求を受けた場合のコストと比較すれば、早期対処のほうが合理的な場合が多いです。

ステップ4:定期的な管理体制を整える

一度対処しても、管理体制を整えなければ同じ問題が再発します。定期的な見回り・草刈り・建物点検を仕組み化することが重要です。遠方に住んでいる場合は、空き家管理サービスを活用する方法もあります。

ステップ5:抜本的な解決を検討する

管理コストが長期的に続く見通しであれば、売却・賃貸・解体などの選択肢を検討することも重要です。空き家を保有し続けること自体のリスクを整理した上で、次の一手を考えましょう。

5. トラブルを防ぐ空き家の管理方法

近隣トラブルを未然に防ぐには、継続的な管理が欠かせません。具体的な管理方法と、管理が難しい場合の代替手段を紹介します。

定期的な草木管理

庭木や敷地内の雑草は、年に数回の剪定・除草を行うことで越境リスクを減らせます。空き家が遠方にある場合は、地元の造園業者や草刈り業者と年間契約を結ぶ方法が有効です。

建物の定期点検

屋根・外壁・塀・ブロック塀の状態を定期的に確認します。特にブロック塀は地震で倒壊するリスクがあり、通行人や隣地に被害をおよぼす可能性があります。専門家による点検で危険箇所を早期発見することが重要です。

空き家管理サービスの活用

遠方に住んでいる場合や、定期的に訪問する時間が取れない場合は、空き家管理サービスを利用することを検討してください。月1〜2回程度の巡回点検・報告・簡易清掃などを行ってくれる業者があります。費用はかかりますが、トラブルが発生した場合の損失と比較すると選択肢として検討する価値があります。

近隣住民との関係を維持する

お盆や年末など、帰省のタイミングで近隣に挨拶をすることも有効です。「所有者が管理している」という実態を知ってもらうことで、小さな問題が大きなトラブルに発展する前に情報を得やすくなります。

空き家バンクへの登録や活用も検討

国土交通省が整備している空き家・空き地バンク制度を利用して、空き家を賃貸・売却・リノベーション活用することも、管理コストを軽減する手段の一つです。物件を活用できれば、放置によるリスク自体がなくなります。

6. よくある質問

Q隣の空き家の木が自分の敷地に越境して困っています。所有者に何か請求できますか?

A民法上、枝が越境している場合は所有者に切除を請求できます(民法233条)。2023年の民法改正により、一定の条件を満たせば越境された土地の所有者が自ら枝を切ることも認められるようになりました。まずは所有者に連絡し、対処を求めることが第一歩です。応じない場合は、自治体の空き家相談窓口や弁護士に相談してください。

Q空き家の外壁材が落ちてきて、うちの車が傷ついてしまいました。修繕費を請求できますか?

A民法717条(工作物責任)に基づき、建物の瑕疵による損害は所有者に賠償責任が生じる可能性があります。被害の証拠(写真・修繕費の見積もり・領収書)を保存した上で、まず所有者に連絡し、応じない場合は弁護士や自治体の相談窓口に相談することをおすすめします。

Q自分の空き家が「特定空家」に指定されるとどうなりますか?

A市区町村から助言・指導が入り、改善されない場合は勧告・命令・行政代執行という順で対応が進みます。勧告を受けた段階で、住宅用地特例(固定資産税の最大1/6軽減)が適用外となり、固定資産税の負担が大幅に増える可能性があります。命令に違反した場合は行政代執行が行われ、その費用も所有者に求償されます。

Q空き家の管理を自分でするのが難しい場合はどうすればよいですか?

A空き家管理サービスを提供する専門業者への委託、または売却・解体などの選択肢を検討することをおすすめします。遠方に住んでいる場合は特に、定期的な管理が難しくなりがちです。管理コストと将来的なリスクを比較した上で、空き家を持ち続けるか処分するかを判断することが重要です。

Q近隣から自治体に通報されて、市から連絡が来ました。どう対応すればよいですか?

Aまずは自治体の担当窓口に連絡し、指摘された問題点と対応期限を確認してください。その上で現地を確認し、必要な対処(草刈り・建物補修・廃棄物処理など)を速やかに行います。対応状況を自治体に報告することで、行政措置が進むリスクを減らせます。放置すると特定空家や管理不全空家の指定につながる可能性があるため、早期対応が重要です。

Q空き家を解体すれば近隣トラブルはなくなりますか?

A建物を解体して更地にすれば、倒壊リスクや不法侵入などの多くの問題は解消されます。ただし、更地になっても草が生い茂ったり、ゴミの不法投棄の対象になったりするケースがあるため、引き続き定期的な管理が必要です。また、解体後は住宅用地特例が適用されなくなり、固定資産税が上がる点も踏まえた上で判断してください。

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参考資料

  1. 令和5年住宅・土地統計調査 / 総務省統計局 / 2024-04-30

    原典URL: https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/tyousake.html

    根拠: 全国の空き家数は2023年時点で900万戸・空き家率13.8%と過去最多水準に達している

  2. 空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報 / 国土交通省

    原典URL: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html

    根拠: 空家等対策特別措置法に基づき、管理不全な空き家は「特定空家」または「管理不全空家」に指定される可能性がある、特定空家に指定されると市区町村から助言・指導・勧告・命令が出され、勧告を受けると住宅用地特例(固定資産税の軽減)が適用外になる、命令に従わない場合は行政代執行が行われることがある

  3. 民法 / e-Gov法令検索

    原典URL: https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

    根拠: 民法上、所有者は自身の財産(建物・樹木など)が他者に損害を与えた場合に不法行為責任(民法709条)を負う可能性がある、民法717条(工作物責任)により、建物の瑕疵による損害については占有者・所有者が損害賠償責任を負う

  4. 空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を! / 政府広報オンライン / 2024-09-19

    原典URL: https://www.gov-online.go.jp/article/202403/entry-5949.html

    根拠: 2024年の空き家対策強化により、管理不全空家の認定要件が整備され、市区町村が勧告を出しやすくなった

監修・著者情報

空き家先生 川口哲平

空き家先生 川口哲平(監修)

全国空き家対策コンソーシアム 代表理事 / 株式会社クラッソーネ 代表取締役CEO

空き家先生のX

経歴

空き家先生・全国空き家対策コンソーシアム代表理事・クラッソーネCEO。名古屋出身、京都大学卒業後、セキスイハイムを経てクラッソーネを設立。その後、全国空き家対策コンソーシアムを設立。

著者:クラッソーネ編集部