1空き家を「国や自治体が買い取ってくれる」というのは本当か
「空き家 国 買取」「空き家 自治体 買取」といった検索で情報を探している方の多くは、増え続ける空き家を国や自治体が直接買い取ってくれる制度がないかと期待して調べています。総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家数は約900万戸、空き家率は13.8%に達しており[1]、行政による何らかの受け皿があってもおかしくないと感じるのは自然なことです。
しかし結論から言うと、国や自治体が空き家を一般的な「買取制度」として購入してくれる全国共通の仕組みは確認できません。検索でよく見かける「空き家バンク」「特定空家等への行政措置(空家法)」「相続土地国庫帰属制度」は、いずれも空き家・空き地の問題に関わる公的な仕組みですが、どれも国や自治体が対価を払って買い取るものではありません。それぞれ何を目的とした制度なのかを正しく理解しておくと、次にとるべき行動を判断しやすくなります。
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国や自治体の制度が使えるか分からないときも、まずは状況を伝えて次にとるべき選択肢を整理しましょう。
2誤解1:空き家バンクは自治体が「買い取る」制度ではない
空き家バンクは、空き家を売りたい・貸したいと考える所有者と、購入・賃借を希望する人を自治体(または自治体から委託を受けた団体)が結びつける「マッチング」の仕組みです[2]。国土交通省が公開している情報でも、空き家バンクは所有者と利用希望者の間を取り次ぐ登録制度として整理されており、自治体自身が空き家を買い取って所有者になるわけではありません[2]。
登録後も、実際に買主・借主が見つかるかどうかは物件の立地や状態、地域の需要によって変わり、成約まで至らないケースも珍しくありません。運営体制や登録条件、仲介の有無、成約時の支援内容は自治体ごとに異なる場合があるため、利用を検討する際は物件がある市区町村の窓口やウェブサイトで最新の運用方法を確認することが必要です。
3誤解2:特定空家等への行政措置(空家法)も買取制度ではない
空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)は、放置すると倒壊や衛生上の問題を引き起こすおそれがある空き家を自治体が「特定空家等」として指定し、所有者に対して除却・修繕・立木竹の伐採などを助言・指導し、改善されない場合は勧告・命令まで行うことができる制度です[3]。
つまり空家法は、自治体が問題のある空き家の管理を所有者に促すための行政上の措置であり、自治体が空き家を購入して引き取るための制度ではありません[3]。勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が外れる場合があるなど、むしろ所有者側の負担が増える方向に働く制度であり、「空き家を国や自治体に引き取ってもらえる」というイメージとは逆の性質を持つ点に注意が必要です。
4誤解3:相続土地国庫帰属制度は「国が買い取る」制度ではない
相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈によって取得した土地を、一定の要件を満たした場合に法務大臣の承認を得て国庫に帰属させることができる制度です[4]。対象は「土地」であり、建物は対象外のため、建物が残っている空き家をそのまま国に引き渡すことはできません。多くの場合、申請にあたっては建物を解体・除却して更地にしておくことが前提になります[4]。
そして最も誤解されやすいのが、お金の流れる方向です。この制度は国が所有者にお金を払って買い取るものではなく、逆に申請者(元の所有者)が承認後、10年分の土地管理費用に相当する負担金を国に納付することで土地の引き渡しが成立する制度です[4]。負担金は土地の種目によって異なりますが、原則20万円程度が目安とされています[5]。これに加えて申請時には審査手数料もかかります。「国が引き取ってお金をもらえる」という理解は誤りで、実際には所有者側が費用を負担して手放す制度である点を押さえておく必要があります。
5空き家をめぐる4つの制度・選択肢の比較
| 制度・選択肢 | 実施主体 | 内容 | 所有者の金銭的な負担・収入 |
|---|---|---|---|
| 空き家バンク | 自治体(委託先団体を含む) | 所有者と購入・賃借希望者を仲介する登録制度 | 成約すれば売却・賃貸収入を得られる場合がある。登録・成約の可否は自治体・物件により異なる |
| 特定空家等への行政措置(空家法) | 自治体 | 助言・指導・勧告・命令等により除却や修繕を促す行政措置 | 所有者に除却・修繕費用の負担が生じる。勧告後は固定資産税の住宅用地特例が外れる場合がある |
| 相続土地国庫帰属制度 | 国(法務局・法務大臣) | 相続で取得した土地(更地が前提)を要件を満たせば国庫に帰属させる | 所有者が負担金(原則20万円程度が目安)と審査手数料を国に納付する。国からの支払いはない |
| 民間買取業者への売却 | 民間の買取業者 | 現状のまま、または解体後に業者が買い取る | 所有者は売却代金を受け取れる。金額は立地・建物状態次第で、業者・条件により差がある |
負担金の額や補助内容、制度の適用条件は個別の土地・自治体によって異なります。最新の要件は各制度の窓口で確認してください。
出典:国土交通省「空き家・空き地バンクの制度概要」「空家等対策の推進に関する特別措置法」関連公表資料、法務省「相続土地国庫帰属制度」概要をもとに編集部作成
6空き家を早く現金化・処分したい場合の現実的な選択肢
国や自治体による買取制度がない以上、空き家をできるだけ早く現金化したい、または負担なく手放したいと考える場合は、次の2つの方向性が現実的な選択肢になります。
1つは、民間の買取業者に売却する方法です。仲介による売却が難しい古い空き家でも、買取業者であれば現状のまま、または解体後の状態で買い取ってもらえる場合があります。買取価格の目安や査定前に確認すべき点は「空き家の買取価格の相場はいくら?査定前に確認すべきポイント」で解説しています。
もう1つは、解体して更地にすることで売却・活用の選択肢を広げる方法です。老朽化した危険な空き家の除却については、自治体によっては解体費用の一部を補助する制度を設けている場合があります。補助の対象条件や申請の流れは自治体ごとに異なるため、「解体補助金 もらえる条件は?家じまいで活用する方法」で整理している内容や、物件がある自治体の窓口での確認が必要です。
なお、相続土地国庫帰属制度の詳細な要件・負担金・申請手続きと、解体との比較については「相続土地国庫帰属制度と解体を比較|どちらが得か条件・費用で判断する」でより詳しく解説しています。
7よくある質問
Q1国が空き家を買い取ってくれる制度は本当にないのですか?
全国共通で「国が対価を払って空き家を買い取る」制度は確認できません。相続した土地を国庫に帰属させる相続土地国庫帰属制度はありますが、これは所有者が負担金を国に納めて土地を引き渡す制度であり、国が買い取ってお金を支払うものではありません[4]。
Q2自治体が空き家を買い取ってくれることはありますか?
自治体が一般的な制度として空き家を買い取る仕組みは基本的にありません。空き家バンクは自治体が購入・賃借希望者との間を仲介する登録制度であり、自治体自身が買主になるものではありません[2]。道路拡幅や公共事業など個別の事情で自治体が土地を取得することはありますが、これは通常の空き家対策としての「買取制度」とは別の話です。
Q3空き家バンクに登録すれば必ず売れますか?
空き家バンクは購入・賃借希望者とのマッチングを図る仕組みであり、登録しても必ず売却・賃貸が成立するとは限りません[2]。成約の可否は物件の立地や状態、地域の需要によって変わります。
Q4特定空家等に指定されると、自治体に買い取ってもらえますか?
いいえ。特定空家等への指定は、除却や修繕を所有者に促すための助言・指導・勧告・命令といった行政措置であり、自治体が買い取る制度ではありません[3]。指定後は所有者側の対応・費用負担が求められる方向に働きます。
Q5相続土地国庫帰属制度を使うと、いくらお金がもらえますか?
Q6建物が残っている空き家は相続土地国庫帰属制度を使えますか?
相続土地国庫帰属制度の対象は「土地」であり、建物は対象外です。建物がある場合は、多くのケースで解体・除却して更地にしたうえで申請することが前提になります[4]。建物付きのまま国に引き渡すことは想定されていません。
Q7相続した空き家を売却したい場合、どのような流れになりますか?
国・自治体による一般的な買取制度がないため、実務上は相続登記を済ませたうえで、民間の買取業者や仲介会社に査定を依頼し、条件が合えば売買契約・引き渡しという流れになるのが一般的です。相続税や特別控除など税務上の取り扱いは個別事情によって異なるため、詳細は税理士や税務署に確認することをおすすめします。
8まとめ:国・自治体の「買取制度」はない。制度の違いを理解して現実的な選択肢を選ぶ
空き家バンク、特定空家等への行政措置(空家法)、相続土地国庫帰属制度は、いずれも空き家・空き地に関わる公的な仕組みですが、国や自治体が対価を払って空き家を買い取る制度ではありません。空き家バンクは仲介、空家法は行政措置、相続土地国庫帰属制度は所有者が負担金を納めて手放す制度であり、それぞれ目的も所有者側の負担の方向も異なります[2][3][4]。
早く現金化したい、または負担を減らして手放したい場合は、民間の買取業者への売却や、自治体によっては用意されている解体費用補助の活用など、現実的な選択肢を組み合わせて検討することが近道です。制度の詳細や自治体ごとの違いは、必ず物件がある自治体の窓口や専門家に確認してください。









