1空き家のリノベーション費用、何にいくらかかるのか整理する
実家などの空き家を「解体せず、住める状態に戻す」と決めたとき、次に気になるのが費用です。リノベーションと一口に言っても、水回りだけを直す簡易な改修から、構造補強・断熱・耐震改修まで含むフルリノベーションまで幅があり、費用感も大きく変わります。
総務省「令和5年住宅・土地統計調査」(2023年時点)によれば、全国の空き家数は約900万戸、空き家率は13.8%と過去最高水準にあります[1]。政府広報オンラインでも、空き家の活用や適切な管理に向けた対策強化が案内されており、放置ではなく「使える状態を維持する」選択肢としてリノベーションへの関心が高まっています。改正空家等対策特措法により管理不全空家等・特定空家等への指導・勧告も強化されているため、建物を残す場合は適切な維持・改修が前提になりつつあります。
一方で、リノベーション費用は数百万円規模になることも珍しくなく、費用負担を軽くする手段として国や自治体の補助金制度を知っておくことが重要です。本記事では、リフォームか解体かの二択比較ではなく「リノベーションを実施する」前提に立ち、費目別の費用感と、活用できる補助金制度の種類を整理します。
2費目別リノベーション費用の目安(フルリノベーション想定)
| 工事内容 | 費用目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 構造補強・耐震改修 | 100万〜300万円程度 | 旧耐震基準(1981年以前)の建物は耐震診断・耐震改修が前提になりやすい |
| 断熱改修(窓・断熱材) | 50万〜150万円程度 | 居間だけの部分断熱か、住宅全体のトータル断熱かで費用差が大きい |
| 水回り(浴室・キッチン・トイレ) | 150万〜300万円程度 | 設備グレードと配管の引き直しの有無で変動する |
| 内装・建具・床壁の改修 | 100万〜250万円程度 | 既存下地の劣化状況により補修範囲が広がることがある |
| 給排水・電気設備の更新 | 50万〜150万円程度 | 築年数が古いほど全面更新が必要になりやすい |
| フルリノベーション合計の目安 | 500万〜1,000万円超 | 延床面積・劣化状況・仕様グレードにより上下する |
費用目安はあくまで編集部の仮定です。建物の構造・延床面積・劣化状況・仕様グレードにより実際の費用は大きく異なります。着工前に複数の施工会社から見積もりを取り、比較することをおすすめします。
出典:国土交通省「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の対象工事区分(耐震性・省エネ性・劣化対策等)を参考に、費用目安は編集部の仮定として整理
3費用を左右する主な要因:構造・断熱・水回り・耐震
リノベーション費用が大きく変動する主な要因は、建物の構造状態、断熱性能、水回り設備の劣化度合い、そして耐震性です。空き家として長期間放置された建物ほど、見た目では分かりにくい劣化が進んでいることがあり、着工後に追加工事が必要になるケースも少なくありません。
旧耐震基準(1981年以前)[2]の建物では、耐震診断の結果によって基礎補強・壁量の増設・金物補強などの耐震改修が必要になることが多く、費用のうち大きな割合を占めやすい項目です。国土交通省は耐震診断・耐震改修の補助制度を実施する地方公共団体を検索できるツールを公開しており、耐震改修を検討する場合はまず所在地の自治体制度の有無を確認することが実務的です。
断熱改修は、窓・玄関ドアなど部分的に行う「居間だけ断熱」と、断熱材を含めて住宅全体を改修する「トータル断熱」で費用差が大きく出ます。国土交通省がまとめる住宅リフォームの支援制度一覧(2025年6月時点)[3]では、環境省が実施する断熱リフォーム支援事業も紹介されており、一定以上の省エネ効果を要件とする制度が存在します。断熱改修は光熱費の軽減効果も期待できる項目のため、居住予定がある場合は優先順位を検討する価値があります。
水回り設備は、既存の配管が老朽化している場合、設備の交換だけでなく配管の引き直しが必要になり、想定より費用が膨らみやすい項目です。空き家期間が長いほど、給排水管の劣化・シロアリ被害・雨漏りなど着工後に判明する劣化箇所が増える傾向があるため、見積もり段階でインスペクション(建物状況調査)を実施しておくことが、後から発生しやすい追加費用を把握することにつながります。屋根・外壁の劣化も、雨漏りにつながると内部の木部・断熱材にまで被害が及ぶことがあるため、優先的に確認しておきたい箇所です。
4リノベーションで使える主な補助金制度の比較(2026年7月時点)
| 制度名 | 対象工事 | 補助の目安 | 主な窓口 |
|---|---|---|---|
| 長期優良住宅化リフォーム推進事業(国) | 耐震性・省エネ性など性能向上リフォーム全般 | 補助率1/3、上限80万円/戸(長期優良住宅認定取得時は上限160万円/戸、要件を満たすと+50万円/戸の加算あり) | 国土交通省に登録された事業者を通じて申請 |
| 断熱リフォーム支援事業(環境省) | 窓・断熱材等の高性能建材を用いた断熱改修 | 対象経費の一部を補助(要件・上限は年度により異なる) | 環境省・登録された実施事業者経由での申請 |
| 耐震改修補助(地方公共団体) | 耐震診断・耐震改修工事 | 補助の有無・補助率・上限額は自治体ごとに異なる | 市区町村の耐震改修担当窓口、国土交通省の支援制度検索サイト |
| 自治体独自の空き家改修補助金 | 空き家の活用を目的としたリフォーム・改修工事 | 補助率・上限は自治体の要綱による。国の空き家再生等推進事業を活用する自治体もある | 空き家対策担当課・建築住宅課 |
制度の対象・補助率・上限額は年度や自治体により変更されることがあります。申請前に必ず国土交通省・環境省・自治体の公式窓口で最新の要件を確認してください。
5国土交通省が支援する「性能向上リフォーム」とは
既存住宅の長寿命化や省エネ化等に資する性能向上リフォームや子育て世帯向け改修等に対する支援を行う。
6補助金を使う際の手順と注意点
リノベーションの補助金を活用する際は、着工前の準備が特に重要です。
①インスペクション(建物状況調査)を実施する。長期優良住宅化リフォーム推進事業など複数の制度で、工事前のインスペクションと維持保全計画の作成が要件になっています。着工前に建築士等へ依頼し、劣化状況を把握しておくことが申請の前提になります。空き家として管理が行き届いていなかった建物ほど、インスペクションで想定外の補修箇所が見つかりやすいため、早めに実施しておく価値があります。
②事前申請のタイミングを確認する。多くの補助制度は「工事着手前の交付申請」が条件です。契約・着工を先に進めてしまうと対象外になる場合があるため、見積もり段階で自治体・事業者に申請スケジュールを確認してください。
③複数の見積もりを比較する。費目別の費用は施工会社によって差が出やすいため、耐震改修・断熱改修・水回りなど工事内容ごとに複数社から見積もりを取り、総額と補助対象範囲を照らし合わせることをおすすめします。
④併用の可否を確認する。国の制度と自治体独自の補助金は、要件を満たせば併用できる場合がありますが、予算上限や対象工事の重複可否は制度ごとに異なります。申請前に窓口で併用可否を確認してください。
⑤補助額は年度・予算状況で変わる前提で計画する。補助制度は年度ごとに要件・予算枠が見直されることがあります。本記事の金額・要件は2026年7月時点の情報であり、実際の申請にあたっては国土交通省・環境省・自治体の最新の公式情報を必ず確認してください。
⑥リノベーション後の維持管理も見据える。改修後に再び空き家として放置すると、改修にかけた費用が生きにくくなります。居住・賃貸・売却のいずれの出口を想定するかを、着工前の段階である程度整理しておくことも大切です。
7よくある質問
Q1リノベーション費用はどこまで補助金でカバーできますか?
制度により補助率・上限額が異なり、全額が補助されるわけではありません。長期優良住宅化リフォーム推進事業では補助率1/3、上限80万円/戸(要件を満たすと160万円/戸)が目安とされています[4]が、自己負担分が発生する前提で資金計画を立てることをおすすめします。
Q2空き家でも長期優良住宅化リフォーム推進事業は使えますか?
制度は既存住宅を対象としており、居住実態の有無だけで一律に対象外になるとは限りません。ただし申請要件(インスペクションの実施、登録事業者の有無等)は制度ごとに異なるため、空き家の状態で申請できるかは国土交通省または登録事業者へ事前に確認することが確実です。
Q3耐震改修の補助金は全国どこでも使えますか?
耐震改修の補助制度は地方公共団体が実施しており、実施の有無・補助率・上限額は自治体ごとに異なります。国土交通省が公開する支援制度検索ツールで、所在地の制度の有無を確認できます。
Q4断熱リフォームだけでも補助金の対象になりますか?
環境省が実施する断熱リフォーム支援事業のように、断熱改修に特化した制度もあります。対象となる省エネ効果の基準が定められているため、工事内容が要件を満たすか事前に確認が必要です。
Q5補助金の申請はリノベーション工事の後でもできますか?
多くの制度で工事着手前の交付申請が条件とされており、契約・着工後に申請しても対象外になる場合があります。工事を発注する前に、自治体または制度の窓口に申請のタイミングを確認してください。
Q6リノベーションと解体、どちらを先に検討すべきですか?
建物の老朽度合いや活用予定によって適した選択肢は変わります。費用・固定資産税・活用可能性の3軸でリノベーションと解体を比較したい場合は、関連記事「空き家はリフォームするか解体するか」もあわせてご確認ください。
Q7リノベーションか解体か迷う場合、相続した空き家を買取してもらう手続きは?
相続登記を済ませたうえで[5]、買取業者に査定を依頼する方法もあります。リノベーションや解体をせずそのまま買い取ってもらえる場合があり、初期費用の負担を避けられることがあります。提示条件に納得できれば売買契約・引き渡しという流れです。税務の取り扱いは税理士に確認することをお勧めします。
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9まとめ:費用相場を把握し、補助金は着工前に窓口で確認する
空き家をリノベーションする場合の費用は、構造補強・耐震改修・断熱改修・水回り・内装・設備更新といった費目ごとに積み上げていくため、延床面積・劣化状況・仕様グレードによって総額が大きく変動します。まずは費目別の費用感を把握し、どこまでの改修が必要かを整理することが計画の出発点になります。
費用負担を軽くする手段として、国の長期優良住宅化リフォーム推進事業や断熱リフォーム支援事業、自治体独自の耐震改修補助・空き家改修補助金など、複数の制度が存在します。ただし制度の対象・補助率・上限額は年度や自治体によって異なり、多くの制度で工事着手前の申請が条件になっています。リノベーションの方向性が固まった段階で、早めに国土交通省・環境省・自治体の窓口へ相談し、最新の要件を確認したうえで着工することをおすすめします。









