1空き家の庭に井戸があったら、まず決めたいこと
実家が空き家になってから、庭に古い井戸があることに改めて気づく方もいます。全国の空き家は2023年に約900万戸あり[1]、古い家ほど、昔使っていた井戸がそのまま残っていることがあります。
空き家の井戸の扱い方は、大きく分けて「使い続ける」「使わずに残して管理する」「埋める」の3つです。どれを選ぶかは、家を残して住む・貸すのか、解体するのか、売るのかで変わります。埋める場合には、「息抜き」や「お祓い」をどうするかで迷う方も少なくありません。
この記事では、3つの選択肢ごとに必要なこと、解体と一緒に埋めるときの段取りと届出、息抜き・お祓いの考え方、売却や相続のときの扱いを、国の通知と自治体の案内をもとに整理します。
空き家の井戸や解体の段取りをLINEで相談
井戸を残すか埋めるか、解体や売却とあわせてどう進めるかを一緒に整理しましょう。
2空き家の井戸は「使い続ける」「残して管理」「埋める」の3つ
飲み水に使うなら、水質検査を受ける
井戸水を飲み水に使う場合、国の通知(飲用井戸等衛生対策要領)では、自宅だけに飲み水を供給する井戸も、1年以内ごとに1回は水質検査をすることが望ましいとされています[2]。自治体が独自に決まりを設けていることもあるため、井戸がある市町村の案内もあわせて確かめましょう。しばらく使っていなかった井戸をまた飲み水に使うなら、使い始める前に検査しておくと安心です。水質に問題があると分かったときは、保健所などに連絡して指示を受けるよう求められています[2]。
使わずに残すなら、ふたと立ち入り防止を
同じ通知では、飲み水に使う井戸について、井戸とそのまわりに人や動物がむやみに入らないようにすることや、ふたやポンプなどの定期的な点検を求めています[2]。使っていない井戸も、転落などを防ぐため、同じようにふたの状態を確かめ、人や動物が近づけないようにしておきましょう。空き家では人の目が届きにくいため、ふたが割れていたり外れていたりしないか、管理のために訪れたときに確かめましょう。子どもや動物が近づける場所にある井戸は、特に注意が必要です。
災害時の協力井戸として残す選択肢も
自治体によっては、断水したときに井戸水を生活用水として近所に提供する「協力井戸」を募集しています。たとえば札幌市の災害応急用協力井戸は、トイレや清掃などの生活用水の提供に協力するボランティア制度で、水を供給する義務はなく、市による水質検査や補助金はありません[3]。登録の条件や支援の内容は自治体によって違うため、井戸を残す場合は、建物があった市町村の制度を確かめてみましょう。
3空き家の井戸:使う・残す・埋めるの比較
| 扱い方 | 必要なこと | 注意点 | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| 使い続ける | 飲み水に使うなら年1回程度の水質検査(自宅専用の井戸は推奨) | 水質に問題があれば保健所などに相談する | 家族が住む・貸す予定があり、井戸水を使いたい |
| 使わずに残して管理 | ふたやポンプの点検、人や動物が入らない工夫 | 空き家では傷みに気づきにくいため、訪問のたびに確認する | 当面は家を残すが、井戸を使う予定はない |
| 埋める | 解体業者などに埋め戻しを頼む。条例の対象の井戸なら自治体への届出 | 息抜き・お祓いをするかは家族で決める。売却や建て替えの前に済ませると話が早い | 家を解体する、更地にして売る・建て替える |
届出の要否や様式は自治体や井戸の用途によって異なります。井戸がある市町村の環境・水道の担当窓口で確認してください。
4解体と一緒に井戸を埋めるときの段取り

解体の見積もりで、井戸の有無と場所を伝える
家を解体するなら、井戸も同じ工事の中で埋めると、重機の手配や敷地の作業が一度で済みます。見積もりを頼むときに、井戸の有無と場所、使っているかどうかを伝えましょう。見積もりでは、井戸枠やポンプの撤去、埋め戻し、整地、息抜きやお祓いの段取りが含まれているかと、追加費用が生じる条件を確かめておくと安心です。古い井戸は、ふたの上に土がかぶって場所が分からなくなっていることもあります。土地の履歴が気になる場合は、アスベスト・地中埋設物リスクチェック(別ウィンドウで開きます)で事前に確認できます。
自治体の届出が必要な井戸もある
井戸を埋めたときに、自治体への届出が必要な場合があります。たとえば横浜市では、条例の対象になっている揚水施設で地下水のくみ上げをやめたとき(井戸を埋め戻したときを含む)は、30日以内に廃止の届出と写真の提出が必要です[4]。どの井戸が対象になるかや届出の様式は自治体によって違うため、井戸がある市町村の環境や水道の担当窓口で確認しましょう。
埋めずに残した井戸は、あとで見つかると工事が増える
解体のときに井戸の存在を伝えずに工事を終えると、あとで土地を売るときや建て替えるときに、地中から古い井戸が見つかることがあります。その場合、追加の工事が必要になり、工期が延びることもあります。地中から井戸などが見つかったときの対応は、解体工事で地中埋設物が見つかったらどうなる?で解説しています。
5息抜きとお祓いはどうする?
地域や家に受け継がれてきた習わし
井戸を埋めるときには、管を設けて地上とつなぐ「息抜き」や、埋める前の「お祓い」をする習わしが、地域や家によって受け継がれています。飲み水の井戸の衛生について定めた国の通知(飲用井戸等衛生対策要領)にも、息抜きやお祓いについての定めはありません[2]。するかどうかは、地域や家の習わしを踏まえて考えましょう。
するかどうかは、家族の考えと地域の習わしで決める
息抜きやお祓いをするかどうかは、家族の気持ちや、地域・菩提寺とのつながりによって決めてよいものです。親族の中に気にする人がいる場合は、あとで気まずくならないよう、解体の前に家族で話し合っておきましょう。どちらにしても、空き家の片付けや解体の段取りの中で、早めに方針を決めておくと進めやすくなります。
頼むなら、解体業者や神社などに早めに相談する
息抜きのやり方や費用、お祓いの依頼先は、地域や依頼先によって違います。息抜きをするなら、埋め戻しの工事と一緒に行う必要があるため、解体業者に見積もりの段階で伝えましょう。お祓いを頼む場合は、日程を工事の前に合わせる必要があるため、神社などに早めに相談しておくと安心です。
6売却・相続のときの井戸の扱い
売るときは、井戸の状況も説明の対象になる
不動産会社が仲介する売買では、契約前の重要事項説明で、飲み水の供給と排水のための施設の整備状況を説明することが、宅地建物取引業法で定められています[5]。井戸を飲み水に使っているか、使わずに残しているか、すでに埋めたかは、買主が検討する材料になります。売却を考え始めたら、井戸の場所と使い方、水質検査を受けた記録があればそろえておきましょう。
井戸を残したまま売るか、埋めてから売るか
建物を残して売る場合、井戸をそのまま残すか、埋めてから引き渡すかは、買主との話し合いで決まることもあります。更地にして売る場合は、解体と一緒に埋めることが多くなります。埋め戻した場合も、井戸の位置や工事の内容、地中に残した井戸枠などを記録しておき、不動産会社や買主に伝えておきましょう。買取業者に売る場合も、査定の時点で井戸の有無を伝えておくと、条件の調整がスムーズです。
相続した家の井戸は、家族で方針を決めておく
相続で家を引き継いだ場合、井戸の管理も相続人が担うことになります。誰が管理するか、残すか埋めるかを家族で決めておかないと、空き家の期間が長くなるほど、ふたの傷みなどに気づくのが遅れます。相続した家の手続きの全体の流れは、相続した空き家の手続きの流れ|相続開始から処分までのスケジュールで確認できます。
7よくある質問
Q1使っていない井戸は、埋めなければいけませんか?
飲み水に使う井戸の衛生に関する国の通知では、井戸のまわりへの立ち入りを防ぐことや、ふたなどの点検を求めていますが、使わなくなった井戸を埋めることまでは定めていません[2]。使っていない井戸も、転落などを防ぐため、ふたや囲いで人や動物が近づけないようにしておきましょう。そのうえで、空き家では管理が行き届きにくいため、当面使う予定がなく、家を解体するなら、あわせて埋めることを検討するとよいでしょう。
Q2空き家の井戸水は、そのまま飲めますか?
長く使っていなかった井戸の水は、そのまま飲まず、水質検査を受けてから使いましょう。自宅だけに飲み水を供給する井戸でも、1年以内ごとに1回の検査が望ましいとされています。問題が見つかったときは、保健所などに連絡して指示を受けます[2]。
Q3息抜きやお祓いは、必ずしなければいけませんか?
地域や家に受け継がれてきた習わしで、飲み水の井戸の衛生について定めた国の通知にも定めはありません[2]。するかどうかは、地域の習わしを踏まえて、家族の考えで決めましょう。する場合は、解体業者や神社などに早めに相談し、埋め戻しの工事と日程を合わせましょう。
Q4井戸を埋めたら、役所に届け出る必要はありますか?
自治体の条例の対象になっている井戸では、届出が必要な場合があります。たとえば横浜市では、条例の対象の揚水施設で井戸を埋め戻したときなどに、30日以内の廃止の届出が必要です[4]。対象かどうかは、井戸がある市町村の担当窓口で確認してください。
Q5解体中に、知らなかった井戸が見つかったらどうなりますか?
埋め戻しの工事が追加で必要になり、費用や工期が増えることがあります。解体を頼む前に、家族や近所の人に昔の井戸の場所を聞いておくと、見積もりの段階で工事に含めやすくなります。地中から見つかったものの扱いは、解体工事で地中埋設物が見つかったらどうなる?で解説しています。
Q6相続した空き家を買取してもらう手続きは?
一般的には、相続登記で名義を相続人に変えたうえで、買取業者に査定を依頼し、条件に納得できれば契約して引き渡します。相続登記は2024年4月1日から義務になっています[6]。井戸がある家は、査定の時点で井戸の有無と使い方を伝えておきましょう。
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9まとめ:井戸は「使う・残す・埋める」を決め、解体の前に伝える
空き家の井戸は、飲み水に使い続けるなら水質検査、使わずに残すならふたと立ち入り防止、埋めるなら解体と一緒に埋め戻すのが基本です。条例の対象になっている井戸では、埋めたあとに自治体への届出が必要な場合もあります。
息抜きやお祓いは地域や家に受け継がれてきた習わしなので、家族の考えで決め、するなら解体業者や神社などに早めに相談しましょう。売却や相続を控えている場合は、井戸の場所と使い方を確かめ、方針を早めに決めておくと、その後の手続きが進めやすくなります。どこから手をつければよいか迷ったら、家じまいの無料相談(別ウィンドウで開きます)で、全体の進め方から確認してみてください。







