1空き家の浄化槽は、使っていなくても管理の義務が続く
実家が空き家になったあと、敷地にある浄化槽をどうすればよいか迷う方は少なくありません。浄化槽は、トイレや台所などの排水をきれいにしてから流す設備で、下水道が通っていない地域の家で使われています。環境省によると、2024年度末の時点で全国に約743万基の浄化槽があり、そのうち約329万基は、トイレの汚水だけを処理する古い方式の「単独処理浄化槽」です[1]。
浄化槽の持ち主には、誰も住んでいなくても、保守点検・清掃・法定検査の義務が続きます[2]。空き家の浄化槽の扱い方は、大きく分けて「そのまま維持する」「使用休止の届出をする」「廃止して撤去する」の3つです。どれを選ぶかは、建物を残すのか、解体するのか、売るのかで変わります。
この記事では、使わない間の義務、休止と廃止の違い、解体と一緒に撤去するときの段取り、売却や相続の前に確認したいことを、浄化槽法と自治体の案内をもとに整理します。
空き家の浄化槽や解体の段取りをLINEで相談
浄化槽を残すか撤去するか、解体や売却とあわせてどう進めるかを一緒に整理しましょう。
2使っていない浄化槽にも続く3つの義務
毎年の保守点検と清掃
浄化槽法では、浄化槽の所有者など、管理について権限を持つ人を「浄化槽管理者」と呼びます。浄化槽管理者は、毎年1回(環境省令で回数が定められている場合はその回数)、浄化槽の保守点検と清掃をしなければなりません[2]。保守点検は装置が正しく働いているかを確かめて調整する作業、清掃は槽にたまった汚泥を引き抜く作業で、どちらも専門の業者に委託できます[2]。
毎年の法定検査(11条検査)
これとは別に、都道府県知事が指定した検査機関の水質検査を、毎年1回受ける義務があります。条文の番号から「11条検査」とも呼ばれます[2]。環境省のまとめでは、2024年度の11条検査の受検率は50.9%で、半数近くの浄化槽が検査を受けていません[1]。空き家になったのをきっかけに、点検や検査の契約が止まったままになっていないか確かめておきましょう。
誰も住んでいなくても義務は止まらない
これらの義務は、浄化槽を使っているかどうかではなく、浄化槽管理者であることにかかります。義務の対象から外れるのは、使用休止の届出をした場合(使用を再開するまで)と、浄化槽を廃止した場合です[2]。何も手続きをしないまま空き家にしておくと、使っていなくても義務は続きます。
3空き家の浄化槽:維持・使用休止・廃止(撤去)の比較
| 扱い方 | 必要な手続き | 使わない間の義務 | 再び使うとき | 向いている状況 |
|---|---|---|---|---|
| そのまま維持する | 届出は不要 | 毎年の保守点検・清掃と法定検査が続く | そのまま使える | 近いうちに住む・貸す予定がある |
| 使用休止の届出をする | 休止にあたって清掃をしたうえで届け出る(届出は任意) | 使用を再開するまで、保守点検・清掃と法定検査の対象外になる | 再開から30日以内に届け出る(届け出ないと5万円以下の過料) | 建物は残すが、しばらく使う予定がない |
| 廃止して撤去する | 最終清掃・本体の撤去と処分を行い、使用をやめてから30日以内に廃止を届け出る(届け出ないと5万円以下の過料) | なくなる | 新たに浄化槽を設置する必要がある | 建物を解体する、下水道に切り替える |
休止の届出を出せる目安の期間や、届出の窓口・様式は自治体によって異なります(例:岐阜県は、撤去はしないが概ね1年以上使用しないことが確実なときに使用休止届を出せると案内)。実際の手続きは、浄化槽がある市町村または都道府県の担当窓口で確認してください。
出典:浄化槽法(e-Gov法令検索)第10条・第11条・第11条の2・第11条の3・第68条、岐阜県「浄化槽に関するお知らせ」を基に編集部作成
4建物を残すなら:使用休止の届出という選択肢
休止届は清掃をしたうえで出せる
浄化槽を撤去せず、しばらく使わない場合は、使用休止の届出ができます。届出は義務ではなく任意で、休止にあたって浄化槽の清掃をしたときに出せる決まりです[2]。届け出ると、使用を再開するまでの間、毎年の保守点検・清掃と法定検査の義務の対象から外れます[2]。届け出なければ、使っていなくても義務は続きます。
休止できる目安と窓口は自治体で異なる
法律上の届出先は都道府県知事ですが、実際の窓口や様式、休止の届出を受け付ける目安の期間は自治体によって異なります。たとえば岐阜県は、撤去はしないものの、おおむね1年以上使わないことが確実なときに使用休止届を出せると案内しています[3]。届け出る前に、浄化槽がある市町村か都道府県の担当窓口で、条件と必要な書類を確かめましょう。
使い始めるときは30日以内に再開を届け出る
休止した浄化槽をまた使うときは、再開した日から30日以内に届け出る必要があります。届け出なかったり、うその届出をしたりすると、5万円以下の過料の対象になります[2]。再開したあとは、保守点検・清掃と法定検査の義務も戻ります[2]。空き家を貸す、家族が住むといった予定が決まったら、点検業者への連絡とあわせて手続きを進めましょう。電気・ガス・水道を使い始める段取りは、空き家の電気・ガス・水道はどうする?維持か解約かの判断ポイントで整理しています。
5解体するなら:浄化槽は汲み取ってから撤去し、廃止を届け出る
撤去の前に必ず汲み取り(清掃)をする
建物を解体するときや、下水道に切り替えるときは、浄化槽を廃止します。その前に、浄化槽清掃業者に依頼して、槽に残った汚泥を汲み取る「最終清掃」を行います[3]。鹿児島市は、汚泥を取り除かずにそのまま地下にしみ込ませる行為は、廃棄物処理法に違反する不法投棄にあたると注意を呼びかけています[4]。汲み取りは解体業者ではなく清掃業者に頼む作業なので、解体の前に、これまで維持管理を頼んでいた清掃業者へ連絡しておきましょう[4]。
解体と同じ工事で撤去すると段取りが一度で済む
浄化槽の本体は、地中に埋まっている設備です。建物の解体と同じ工事の中で掘り出して処分すれば、重機の手配や敷地の掘り返しが一度で済みます。撤去しないまま解体を終えると、あとで土地を売るときや建て替えるときに地中に残った浄化槽が見つかり、追加の工事が必要になることがあります。地中から浄化槽などが見つかったときの対応は、解体工事で地中埋設物が見つかったらどうなる?で解説しています。解体の見積もりを取るときは、浄化槽の有無・場所・大きさを伝え、撤去と処分が見積もりに含まれているかを確かめましょう。浄化槽のほかにも地中に残っていそうなものが気になる場合は、アスベスト・地中埋設物リスクチェック(別ウィンドウで開きます)で事前に確認できます。
廃止届は使用をやめてから30日以内
浄化槽の使用を廃止したら、その日から30日以内に届け出る義務があり、届け出ないと5万円以下の過料の対象になります[2]。岐阜県のように、届出の窓口を浄化槽がある市町村の役場としている自治体もあります[3]。解体を頼む業者に、廃止届の書類の準備まで手伝ってもらえるかを確認しておくと、手続きの漏れを防げます。

6売却・相続の前に確認したい浄化槽のこと
売却では排水設備の状況が説明の対象になる
不動産会社が仲介する売買では、契約前の重要事項説明で、排水のための施設の整備状況を説明することが宅地建物取引業法で定められています[5]。浄化槽の種類(単独処理か合併処理か)、維持管理の記録、下水道につなげるかどうかといった情報は、買主が検討する材料になります。売却を考え始めたら、点検・清掃の記録や法定検査の結果をそろえておきましょう。
古い単独処理浄化槽は早めに方針を決める
単独処理浄化槽は、トイレの汚水だけを処理し、台所やお風呂の排水は処理しない方式です。2001年4月から、原則として新たに設置できなくなっています[6]。2019年の法改正で、そのまま放置すると生活環境や公衆衛生に重大な支障が出るおそれのある古い単独処理浄化槽(特定既存単独処理浄化槽)には、都道府県知事などが除却(撤去)の指導や勧告、命令を行えるようになりました[6]。空き家に単独処理浄化槽が残っている場合は、解体するのか、合併処理浄化槽に入れ替えて使うのかを早めに決めておくと安心です。
相続した浄化槽の管理は相続人が担う
浄化槽管理者は、浄化槽の所有者や占有者など、管理について権限を持つ人です[2]。相続で家を引き継げば、浄化槽の管理も相続人が担うことになります。相続や売買で浄化槽管理者が変わったときは、新しく管理者になった人が、変更の日から30日以内に都道府県知事へ報告書を出す必要があります[2]。相続人が複数いて遺産分割がまとまっていない間も、点検や清掃の手配が止まらないよう、誰が業者とやり取りするかを家族で決めておきましょう。相続した空き家の手続き全体の流れは、相続した空き家の手続きの流れ|相続開始から処分までのスケジュールで確認できます。
7よくある質問
Q1誰も住んでいない空き家でも、浄化槽の法定検査は受けなければいけませんか?
Q2使用休止届と廃止届はどう違いますか?
使用休止届は、浄化槽を残したまま使用を止めるときに出す任意の届出で、再び使うときは30日以内に再開の届出が必要です。廃止届は、解体や下水道への切り替えで浄化槽を使わなくなったときに、30日以内に必ず出す届出です[2]。
Q3浄化槽を撤去しないで、埋めたままにしてもよいですか?
汚泥を汲み取らずに埋めたり、地下にしみ込ませたりすることは、不法投棄にあたるおそれがあります[4]。撤去せずに残すことを認めるかどうか、残す場合にどのような処置が必要かは自治体によって異なるため、浄化槽の担当窓口と解体業者に確認してください。売却や建て替えの際に地中から見つかると、追加の工事が必要になることもあります。
Q4浄化槽の撤去費用はどれくらいかかりますか?
浄化槽の大きさや埋まっている深さ、重機が入れるかどうかなどで変わるため、一律の金額はありません。汲み取りは清掃業者、本体の撤去と処分は解体業者というように依頼先が分かれることも多いため、解体の見積もりを取るときに、浄化槽の撤去と処分が含まれているか、汲み取りは別に頼む必要があるかを確かめましょう。
Q5浄化槽の撤去に補助金は使えますか?
撤去費の補助には、くみ取り槽や単独処理浄化槽から合併処理浄化槽に入れ替える「転換」が条件になっている制度があります。たとえば札幌市は、合併処理浄化槽に転換する場合に、既存の槽の撤去費を設置費の補助に加えて対象にしています[7]。建物を解体して撤去するだけの場合は対象にならないことがあるため、撤去だけの場合も含めて、浄化槽がある自治体で対象の条件を確認してください。空き家の解体そのものに使える補助金がないかもあわせて確かめておくと安心です。解体の補助金は解体補助金 もらえる条件は?家じまいで活用する方法で整理しています。
Q6相続した空き家を買取してもらう手続きは?
一般的には、相続登記で名義を相続人に変えたうえで、買取業者に査定を依頼し、条件に納得できれば契約して引き渡します。相続登記は2024年4月1日から義務になっています[8]。浄化槽がある家では、査定のときに浄化槽の種類や点検の記録を伝えておくと、撤去や入れ替えを見込んだ条件かどうかを確認しやすくなります。
8あわせて読みたい関連記事
9まとめ:浄化槽は「残すなら休止届、壊すなら汲み取りと廃止届」
空き家の浄化槽は、使っていなくても、届け出ないかぎり保守点検・清掃・法定検査の義務が続きます。建物を残してしばらく使わないなら、清掃をしたうえで使用休止の届出を検討しましょう。解体するなら、清掃業者に汲み取りを頼んでから本体を撤去し、浄化槽の使用をやめた日から30日以内に廃止を届け出ます。
売却や相続を控えている場合は、浄化槽の種類と点検の記録を確かめ、古い単独処理浄化槽をどうするかを早めに決めておくと、その後の判断がしやすくなります。解体と浄化槽の撤去の段取りに迷ったら、家じまいの相談窓口(別ウィンドウで開きます)で全体の進め方から相談してみてください。









