1「負動産」は、持っているだけで負担が続く不動産
「負動産」は、固定資産税や管理の手間がかかり続けるのに、売ることも使うことも難しい不動産を指す言葉です。親から相続した地方の実家などで、同じ悩みを抱える人は少なくありません。国土交通省の調査では、調査時点でも空き家だった住宅の所有世帯のうち、今後5年程度も「空き家として所有しておく」意向の世帯が約32%で、最も多くなっています[1]。
負動産を手放す方法は、仲介での売却、買取、解体して土地を売る、寄付・譲渡、相続土地国庫帰属制度、相続放棄の6つに大きく分けられます。このうち相続放棄は、相続が始まった後に、相続を承認するか放棄するかを判断する段階で検討する別枠の選択肢です。この記事では、実家が負動産になりやすい条件と、6つの方法の違い、選ぶ順番を整理します。それぞれの詳しい手続きは、各解説記事への案内を添えています。
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2負動産とは?実家が負動産になる条件
負動産は「価値より負担が大きい不動産」を指す言葉
負動産は法律用語ではなく、決まった定義もありません。この記事では、「持ち続ける費用や手間が、その不動産の価値や使い道を上回り、しかも売りにくい不動産」という意味で使います。住む人や借りる人がいて、費用や手間に見合う使い方ができているなら、負動産とは捉えない場合もあります。誰も使う予定がなく、買い手もつかない状態が続くと、実家は負動産になりやすくなります。
需要の弱い立地と、建物の傷み
負動産になりやすいのは、人口が減っている地域や、駅・商業施設から遠い場所の家です。買い手や借り手が少ないと、価格を下げても動かないことがあります。建物の傷みも大きな要因で、雨漏りや設備の古さがあると、直す費用が売値を上回ることもあります。地方で売れにくい理由は地方の空き家が売れないときの選択肢で解説しています。
再建築できない土地や、権利関係が複雑な家
道路への接し方が基準を満たさず建て替えができない土地(再建築不可)や、隣地との境界が決まっていない土地は、買い手が限られます。兄弟の共有名義で全員の合意がそろわない場合や、相続登記が済んでいない場合も、売りたくても手続きが進みません。こうした条件が重なるほど、手放す方法の選択肢は狭くなります。
3負動産を持ち続けると続く負担
固定資産税と管理の手間は、使わなくてもかかる
不動産を所有している限り、使っていなくても固定資産税がかかります。草刈りや換気、雨漏りの確認など、建物と敷地を保つ手入れも必要で、遠方に住んでいれば交通費と時間もかかります。管理にかかる費用の目安は空き家の管理費用で解説しています。
管理が行き届かないと、負担がさらに増える
放置すれば特定空家になるおそれのある「管理不全空家」として市区町村から勧告を受けると、その敷地は固定資産税の住宅用地特例の対象から外れます[2]。この特例は税額ではなく、税額の計算のもとになる課税標準を減らすものです[3]。さらに状態が悪化すると、行政代執行で取り壊され、その費用を請求されることもあります。流れは空き家を放置するとどうなるか、費用は行政代執行の費用で解説しています。
「とりあえず持っておく」を選ぶ人も多い
国の調査で、今後5年程度も空き家として所有しておく意向の世帯に理由を尋ねたところ、「物置として必要」が55.8%で最も多く、「解体費用をかけたくない」が47.3%、「住宅の古さ」が37.0%と続きました[1]。「どうすればよいか分からない」と答えた世帯も13.8%ありました[1]。費用や手間を理由に持ち続ける世帯がある一方、物置としての利用など、持ち続ける目的がある世帯も含まれます。主な理由を次のグラフにまとめます。
4空き家のまま持ち続ける理由(国の調査)
- 物置として必要55.8 %
- 解体費用をかけたくない47.3 %
- 住宅の古さ37 %
- さら地にしても使い道がない34.8 %
- 取り壊すと固定資産税が高くなる28.2 %
- 家財などの処理が困難21.6 %
- どうすればよいか分からない13.8 %
- 借り手・買い手の少なさ11.3 %
- 再建築不可(道路付けの悪さなど)6.9 %
※ 令和6年12月1日時点でも空き家で、今後5年間程度も空き家として所有しておく意向の世帯に尋ねた結果(複数回答、N=323千世帯)。全23項目のうち、手放すときの費用・手間・需要に関わる9項目を抜粋しています(ほかに「好きなときに利用や処分ができなくなる」27.6%、「特に困っていない」26.6%、「将来自分や親族が使うかもしれない」25.1%など)。一戸建て以外の空き家も含み、持ち続ける理由を示すもので、その空き家が売れないかどうかや、負動産にあたるかどうかを示すものではありません。原図では理由を「共通」「賃貸・売却しない理由」「取り壊さない理由」に分けて尋ねており、Nは推計の世帯数です。
5負動産を手放す方法①:売って手放す

相続した実家を手放す方法は、売って手放す方法と、売れないときに譲ったり引き取ってもらったりする方法に分かれます。まずは売れるかどうかを確かめ、難しければ次の方法を比べるのが基本の順番です。相続放棄は、相続開始後に承認・放棄を判断する段階の選択肢なので、次の章で分けて説明します。
仲介で売り出す
不動産会社に一般の買主を探してもらう方法です。買取より高く売れる場合もありますが、成約までの期間や、その間の維持費も含めて比べましょう。ただし需要の弱い地域では、売り出しても長く買い手がつかないことがあります。近くで似た物件が売れているか、売り出し価格をどこまで下げられるかを確認しましょう。自治体の空き家バンクに登録して、移住希望者などに探してもらう方法もあります。登録するか迷う場合は空き家バンクか解体・売却かで判断の流れを解説しています。
買取業者に買い取ってもらう
不動産会社が買主になる方法で、買い手を探す期間がかからず、家財が残ったまま引き取ってもらえる場合もあります。価格は仲介より低くなりやすく、立地によっては断られることもあります。複数社に査定を依頼し、手取り額と引き渡しの条件を比べましょう。相場の考え方は空き家の買取価格の相場で解説しています。
解体して土地として売る
建物が古く、土地として使い道がある場合の方法です。解体費用が先にかかり、建物がなくなると住宅用地の特例が使えなくなるため、売れるまで土地の固定資産税が上がることがあります。売れる見込みを確かめてから解体を決めましょう。費用の内訳は空き家の解体費用で解説しています。
6負動産を手放す方法②:譲渡・国庫帰属と、相続の承認前に検討する相続放棄
自治体や隣地の人などに寄付・譲渡する
寄付を受けるかどうかは自治体が判断します。たとえば名古屋市は、受け入れる基準を「本市の事業に利用できる土地」「処分(換価)が容易であると見込まれる土地」とし、境界が確定していない土地や維持管理が困難な土地は受けられないとしています[4]。受け入れ基準は自治体によって異なります。使い道がない土地は断られることもあると考え、まず自治体に相談しましょう。隣地の所有者などの個人に無償や低い価格で譲る方法もありますが、名義変更の費用や税金の扱いを事前に確認する必要があります。
相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう
相続または相続人への遺贈で取得した土地を、法務大臣の承認を受けて国に引き取ってもらう制度で、2023年4月27日に始まりました。建物がある土地は申請できません。ただし、更地にしてもほかの要件で利用できないことがあるため、解体の前に法務局で要件を確認しましょう。審査手数料は土地1筆あたり1万4,000円で、申請の取下げや却下・不承認の場合も返還されません[5]。承認されると負担金を納めます。20万円が基本ですが、市街化区域などの宅地・農地、農用地区域の農地、森林などは面積に応じて算定されます[6][7]。解体との比べ方は相続土地国庫帰属制度と解体の比較で解説しています。
相続放棄で、はじめから相続しない
相続放棄は、相続開始後に承認・放棄を判断する段階の選択肢です。原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述します[8]。熟慮期間内に財産を調べても判断できない場合は、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てることができ、伸長するかどうかは家庭裁判所が判断します[9]。放棄すると初めから相続人でなかったものとみなされ[10]、預貯金なども含めて権利も義務も一切受け継ぎません[8]。実家だけを放棄することはできません。また、放棄の時に実家を現に占有している場合は、ほかの相続人や相続財産の清算人に引き渡すまで、自己の財産と同じ注意をもって保存する義務が残ります[10]。判断の基準は空き家の相続放棄、放棄後の管理は相続放棄した後の空き家で解説しています。
7負動産の手放し方を選ぶ順番
まず相続の状況と期限を確かめる
まず、自己のために相続が始まったことを知った時期と、承認・放棄の状況を確認します。放棄を検討する場合は、原則3か月の熟慮期間に注意し、借金も含めた財産の全体を確認しましょう[10]。放棄を選ぶかどうかで、その後の選択肢が大きく変わるためです。相続することを決めた後は、相続登記が済んでいるか、共有者がいるかを確認しましょう。
売れるかどうかを査定で確かめる
次に、仲介と買取の両方で査定を取り、売れる見込みと手取り額を確かめます。売れないと思い込んでいても買取なら値がつくこともあれば、反対に、費用を払ってでも早く手放したほうが負担が小さい場合もあります。建物を残したままの価格と、解体後の土地の価格を比べると判断しやすくなります。
売れなければ、譲渡と国庫帰属を総額で比べる
売却が難しい場合は、自治体や隣地への譲渡と、国庫帰属制度を比べます。国庫帰属では審査手数料と負担金が必要です。建物がある場合は、解体費なども含めた総額で比べることが大切です。制度の利用は、土地がある都道府県の法務局・地方法務局の本局で、事前予約をして相談できます[11]。相続放棄や権利関係の判断は弁護士や司法書士に確認しましょう。そのうえで、売却・買取・解体のどれが現実的かを整理したい場合は、家じまいの相談窓口(別ウィンドウで開きます)も利用できます。
8よくある質問
Q1負動産とはどういう意味ですか?
固定資産税や管理の負担が、その不動産の価値や使い道を上回り、売ることも難しい不動産を指す言葉です。法律で定められた用語ではありません。誰も使う予定がなく、買い手もつかない実家は、負動産になりやすいといえます。
Q2売れない実家を無料で国に引き取ってもらえますか?
Q3実家だけを相続放棄することはできますか?
できません。相続放棄をすると、預貯金なども含めて権利も義務も一切受け継がないことになります。申述は、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に行います[8]。
Q4自治体に寄付すれば引き取ってもらえますか?
自治体が判断するため、引き取ってもらえるとは限りません。名古屋市のように、事業に利用できる土地や処分しやすい土地などの受け入れ基準を設けている例があります[4]。まずは物件がある自治体の担当窓口に相談しましょう。
Q5負動産を手放すのにお金はかかりますか?
Q6相続した空き家を買取してもらう手続きは?
まず相続人と名義を確認し、相続登記の準備を進めます。相続登記の申請は2024年4月1日から義務化されています[12]。並行して複数の買取業者に査定を依頼し、建物の状態や家財の有無を伝えて条件を確認します。価格と条件に納得できれば売買契約を結び、引き渡しに進みます。税金の扱いは個別の事情で変わるため、税理士に確認しましょう。
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10まとめ:負動産は「売れるか」を確かめてから手放し方を選ぶ
負動産は法律用語ではありませんが、使う予定も買い手もない実家は、固定資産税と管理の負担だけが続く状態になりがちです。手放す方法は、仲介・買取・解体して土地を売る、寄付・譲渡、相続土地国庫帰属制度、相続放棄の6つに分かれます。
まず相続の期限と権利関係を確認し、次に査定で売れる見込みを確かめ、難しければ譲渡や国庫帰属を総額で比べる、という順番で考えると整理しやすくなります。法的な判断は弁護士・司法書士に相談しながら、無理のない方法を選びましょう。









